『 NOVA 1 』 大森 望 編

NOVA 1---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫 お 20-1 書き下ろし日本SFコレクション)

◆ NOVA 1---書き下ろし日本SFコレクション 大森 望 編 ( 河出文庫 ) \998

 評価…★★★★☆

<作品紹介>

「 オリジナル・アンソロジー『 NOVA 』 開幕編となる本書では、2010年代の日本SFの中軸を担うべき作家たちに新作を依頼し、それぞれの書き手が 「 これぞSF 」と思う作品を全力で書いてもらった。ここに収められた11編は、“ 新星 ( nova ) ”の名にふさわしい強烈な輝きを放っていると信じている 」――大森望  ( 文庫表紙折返しより )

SFを主とした書き下ろし新作短編を集めた文庫アンソロジーシリーズの第一弾。

過去にある同様のアンソロジーと本シリーズが一線を画するのはテーマ・アンソロジーではないということだ。 広義のSFに該当する作品で短編ということ以外何の制約もない書き下ろしアンソロジーというのはかなり新鮮で魅力的だ。 テーマがあってさえ、全く違う世界のような作品が多く集まるこのジャンルで、一体どんな物語が、いくつの宇宙が展開されるのかとわくわくさせられる。

その嚆矢となる本書に集められた作家陣はジャンルファンなら頷けるような独特の魅力ある世界観を持った中堅作家を中心に揃えられている。私見では、SFと限定されないジャンルミックスな作品を書く、或いは様々なジャンルに亘って作品を発表している作家が多いように思われる。

収録作は以下の通り ( 掲載順 )。

北野 勇作 『 社員たち 』、 小林 泰三 『 忘却の侵略 』、 藤田 雅矢 『 エンゼルフレンチ 』、 山本 弘 『 七歩跳んだ男 』 、 田中 啓文 『 ガラスの地球を救え! 』、 田中 哲弥 『 隣人 』、 斉藤 直子 『 ゴルコンダ 』、 牧野 修 『 黎明コンビニ血祭り実話SP 』、 円城 塔 『 Beaver Weaver 』、 飛 浩隆 『 自生の夢 』 、 伊藤 計劃  『 屍者の帝国 』。


同時に買ってきた 『  ゼロ年代SF傑作選   』 と違って、こちらは馴染み深い作家揃いで、予想通りの読後感でした^^

この中で名前すら初見だったのは斉藤直子氏だけなのですが、この方の作品はなかなか拾いものでした。ノリ的には懐かしのSFバカ本系^^ ほんとにすっげぇ下らないんだけど笑える^^;  この方の他の作品も読んでみたいですね。 同様な下らない系とそれ以外があればいいな。

この作品の大本の発想であろうと思われる「 不幸の手紙 」 → 「 棒の手紙 」 は前に何かで読んだことがある気がするけど何だったかなぁ。 「 棒が訪れます 」 というイメージを凄く視覚的に( 具体的には、蝶ネクタイした棒が 「 やあ 」 って、ドアから入ってくる絵^^; ) 記憶してるので、多分まんがだったのだろうと思うけど。 あ、坂田靖子のような気がしてきた…。

で、もう1人、名前は知ってたけど初読だった藤田雅矢氏は、悪くないとは思うけど残念ながら私の好みには合わなかったですね。まぁ、1作で判断すべきではないだろうけど。

何というのかしら、小ギレイで上品な正統派SFなんですよね。しかも、収録作は若い女性の一人称なので少女趣味な感じまでしてしまう。 しかも、キーになるのがはスイーツだしな。 私はカジシンさんのリリカル系も敬遠するような人間なので、そういうのどうもダメ(-_-;)

叙情的なのとか人間ドラマみたいなのとか入るSFって苦手なんですよね。 それらに加えて、ホラーとかエロとかグロとか入ってると好きなんだけど。 って、エロが入ってる作家さんは寡聞にして1名しか存じ上げないが^^; それよりはガチガチのハードSFの方がまだいいな。今の私に読む気力があるかどうかは別として。

そして、元々好きな方々( 田中啓文北野勇作牧野修小林泰三 ) の作品はそれぞれ期待通りに面白かったです^^ 

啓文さんは相変わらず思い切ってバカだし ( 褒めてます^^; )、北野さんはシュールにほのぼの、牧野さんは奇想とグロのハーモニー、小林泰三はちょっと説明しにくいんだけど、氏らしい作品。ちょっとグロくて何かとぼけてて、SF慣れしてない人にはちょっと難解かもって感じ。

で、御馴染みではあるけど好きでも嫌いでもない田中哲弥氏の作品が今回はなかなか面白かったですね。汚物満載で、とぼけてて、不条理で、同姓の啓文さんのイメージに近いです。

そして、これが絶筆だという伊藤計劃氏の作品はこの続きが読めないなら、いっそ載せないで欲しかったという出来でございました(;_;)

私、この方の存在を亡くなって初めて知ったので、何か色々ショックです。 34歳でデビュー2年目の死はいくら何でも早過ぎるだろう…。 ちなみにガンらしいのですが…。

こんな社会にとって色んな意味で有益な方が早世してしまって、私のような害悪ではないにしろ全く無益な塵芥のような人間が馬齢を重ねていくなんて、世の中って理不尽過ぎるよなぁ。いや、理に適うことだからお前死ねよって言われても困りますけどね…。