『 閉じた本 』 ギルバート・アデア

閉じた本 (創元推理文庫) ◆ 閉じた本  ギルバート・アデア/訳:青木純子 ( 創元推理文庫 ) \882 評価…★★★☆☆ <作品紹介> 事故で眼球を失った大作家ポールは、世間と隔絶した生活を送っていた。ある日彼は自伝執筆のため、口述筆記の助手として青年ジョンを雇い入れる。執筆は順調に進むが、ささいなきっかけからポールは恐怖を覚え始める。ジョンの言葉を通して知る世界の姿は、果たして真実なのか?何かがおかしい…。彼の正体は?そしてやって来る驚愕の結末。会話と独白のみの異色ミステリ。  ( 文庫裏表紙紹介文 )
いつだったかのこのミスのランキングに入っていた記憶があったのと、帯の 「 ただの会話が、なぜこれほど怖いのか 」 というのに惹かれて購入致しました。 が、そんなに感心はしませんでしたね。 面白いことは面白いけど、会話と独白のみという形式に特に魅力も意義も感じられない。まぁ、ネタを割らないためには地の文はない方がいいんだろうけど。帯にあるような恐怖感というのも全然感じないですね。サスペンスな感じもない。それは絶対何かあるんだよなって思いながら読んでるせいもあるだろうけど。 ※以下ネタバレ有り※ でも、オチには結構感心しました。身体的理由により不自由している老人の生活に入ってくる若者の不審な行動っていう系統の話は結構あるんだけど、大抵は営利目的か異常者なんですよね。しかし、本作においては動機は復讐なのです。それも逆恨みとかじゃなくて、ほんとに真っ当な復讐( ってのは変? )。 主人公( と言っていいのかな? ) で被害者であるポールが感情移入しづらい人間であるだけに、一気にジョンへの同情心が湧いてきちゃいますね。 ジョンもさして魅力的な人物ではないのですが、過去の話を聞けばそれも無理からぬことだと思うし、そういう過去を経て現在に至った努力と才能に感心してしまいます。 まぁ、そういうのは置いても、とにかく私は弱いものに性的虐待を行う輩が我慢ならんのですね。中でも自分の地位を利用するような野郎は何度殺しても飽き足りません。更にその中でも、子供たちを守り導くような立場にあるもの( 教師、牧師などの宗教的指導者など )が行う性的虐待については言葉では表せないほどの怒りを感じます。何でこういうヤツらに極刑を科せないんだろうか。 凄く話が飛ぶようですが、漫画 『 パタリロ 』 の主人公パタリロが国王である国・マリネラでは痴漢は極刑なんだそうですよ。 何て素晴らしい国なんでしょう! 私はこれを読んで凄く感動しました。元々好きだったけど、パタリロと作者の魔夜峰夫氏が大好きになりましたね^^ 年少者への性的虐待と強制わいせつと強姦は問答無用で死刑か宮刑だよな。ほんとは裁判もしてやりたくないくらいだけど、冤罪があったら大変なのでそこはきっちりするけど。 ……と、話がまた大幅に逸れてますね(*_*) そうそう、私はポールが同性愛者だという設定が何だかとってつけたような気がしていたのですね。係累がいないという理由にはなるけど、孤独感を際立たせるにはそういう特殊性はむしろ逆効果ではないかな、それ以外に何かに話に関わってくるのかしらなどと思っていたのですが、こういう形で関わってくるわけだったのですねー。ジョンが本性を現し始めた辺りで、なるほど!と膝を叩きました。 まぁ、そんなこんなで、オチには納得かつ感心したのですが、その後がいけません。実はジョンの犯罪には綻びがあったようなのです。作品はそれを暗示して終わるのですが、内容的に確実に発覚して有罪になるだろうなという感じなんですよね。それはないよと思っちゃう。 いや、作品としてはこの終わり方で正しいと思います。うまく出来てると思うし、これ以外のラストはむしろ不自然。でも、さきほどから述べているような考えを持つ身としては、完全犯罪にしといてやれよという気持ちがどうしても拭えません(T_T) 悪いヤツだから殺してもいいという発想が間違っているとはわかってるんだけどね。