『 解雇手当 』 ドゥエイン・スウィアジンスキー

◆ 解雇手当 ドゥエイン・スウィアジンスキー/訳:公手 成幸 ( ハヤカワ・ミステリ文庫 ) \966  評価…★★★☆☆ <あらすじ> 「 これからきみたち全員を殺す 」 社長がそう宣言したとき、36階のオフィスは脱出不可能の牢獄と化していた。通信回線は不通、携帯電話は使えず、エレベーターも止められた。階段のドアには猛毒のサリンを噴出する装置が仕掛けられている。閉じ込められた男女は毒を飲んで自殺するか、射殺されるか、究極の選択を迫られる! 脱出するのは誰か? それとも全滅か? 読者の度肝を抜くハイパー版 『 そして誰もいなくなった 』。 ( 文庫裏表紙紹介文 )
紹介文とタイトルを見て、「 おお、何と魅力的な設定! 」 と小躍りし、私の気に食わないトール版であるのをものともせず購入したのですが、実際はかなり微妙でしたねぇ…(T_T) あ、あと、紹介文の中の 「 ハイパー版 『 そして誰もいなくなった 』」 ってのは、初見時にも何だこりゃと思ったけど、読後も意味わかんねーしって感じです。まぁ、この紹介文は全般的にウソつきでセンスないんだが。 ※以下ネタバレ有り※ いや、小説としては面白くなくはないんですよ。かなり悪くないと言っていいんだけど、メインどころ張ると思って疑ってなかった社長が第二章の冒頭くらいで死んじゃうんだもん。 え? ですよ。 「 これから君たちを全員殺す 」って、あんたが真っ先に殺されてんじゃん…。 冒頭に全ての設定を覆すようなどんでん返しを出してこられても困るんですけど(-"-;) てゆーか、期待してた物語 ( 現代的なオフィスにある業績良好な金融サービス会社が、実は政府情報機関のフロント企業で、何らかの理由によって廃業されることになり一部の社員も含めてが証拠隠滅が始まった。その背景とは?…みたいな ) まだ始まってないんですけど、もしもし? って感じですよ。 アウトラインだけど会社の正体と、社員の中にも全く何も知らない民間人と各種エージェントが混在してるようだなぁという程度の設定は一応わかったけど、まだ全然じゃんと思ってると、ここから物語は完全に社長秘書のモリーのものになってしまうんですね。そして、それは元々の組織云々の物語ではなく、ほんとに彼女自身の物語なのです。 地味でおとなしそうで家庭的という見かけを裏切って、優秀なエージェントである彼女は、社長が自分も始末しようとしているのに気付き、逆にこの機会を利用してのし上がろうと思い立つわけです。そして、彼女は上層部に密かに提案します。社長の代わりに自分がこの全てを始末する。そして、その際に持てる技能の全てを見せ付けるようにするから、その首尾と技能が合格であれば、自分の命を救って、新たな仕事を与えてくれと。 これも実に予想外で魅力的な設定で、実際モリーの話になってからもそれはそれなりに面白いんだけど、んー、やっぱ、これ期待してたのと違うーって感じが拭えない。 ドライでクールなのかと思ったモリーが実はしがらみを抱えて必死になってるみたいのも何か違うって感じだし。そして、最後まで納得できる理由や詳細な設定が明らかにされないし、利用してるのかと思ったモリーの方が実はジェイミーに惚れてるし、最後は突然ホラー調で落ちてるしとかで、ほんと最初から最後まで、えええ?って感じでした(T_T)  あと、説明文付きの挿絵が相当ウザいです(-"-;) 挿絵全般を否定はしないけど、ミステリとかサスペンスにはいらなくねーか? 繰り返しますが、面白くなくはない。でも…って感じなんですよね。あー、もしかすると私みたいに先入観というか、期待感を高めて読まずに読んだら、結構アリなのかも。 あと、肉弾戦による戦闘シーンとかがなかなか派手( しかも、ほとんどがキャットファイト^^ あ、もちろんそんな甘いもんじゃなく殺し合いなんですけど^^; )だし、何より秘書ファッションでアクションする清楚な感じの女性ってのは相当萌える( 笑 )ので、これ映画にしたら凄く面白いかも。ラストのしょーもないオチも映画的だしね。