『 花妖譚 』 司馬 遼太郎

◆ 花妖譚  司馬 遼太郎 ( 文春文庫 ) \420  評価…★★★☆☆ <作品紹介> 清の八十翁・松齢の庭に突如咲いた一茎の黒い花。不吉の前兆を断たんとしたその時に現われたのは ( 黒色の牡丹 ) 。 人間稼業から脱し、仙人として生きる修行を続ける小角がついに到達した夢幻の世界とは ( 睡蓮 ) 。 作家 「 司馬遼太郎 」 となる前の新聞記者時代に書かれた、妖しくて物悲しい、花にまつわる十篇の幻想小説 ( 文庫裏表紙紹介文 ) 上掲以外の収録作は、『 森の美少年 』、『 チューリップの城主 』、『 烏江の月 』、『 匂い沼 』、『 菊の典侍 』、『 白椿 』、『 サフラン 』、『 蒙古桜 』 です。 題名に花の名前が出てないものは読んでのお楽しみ^^
人間模様などを描いたリアルな時代小説のイメージが強い著者の珍しい幻想小説集で、しかも題材が花であるせいか本朝が舞台の作品が少ない( 大半が中国 )のも貴重な感じです。 私は著者の本道も好きなのですが、 『 ペルシャの幻術師 』のような氏の中では異色と言われているような短編が好きなので、大喜びで購入しましたが期待以上のものでした^^  こういう路線のものをもっと書いて欲しかったなぁ。まぁ、このテ( 中国古典などの元ネタありの幻想・怪奇系作品 )のは司馬さん程の方が書かなくても良いのかなという気もしますけどね^^; ちなみに本書収録作は、生花の某流派の機関誌に連載されていたそうです。なるほど、だから花が題材なのかって思いますが、作品の質は題材の豊富さも含めて著者が好んで書いたとしか思えないものです。その流派とどういう関係がおありだったのがわかりませんが、きっと花がお好きだったのでしょうね^^ 収録作の中では題材である花も含めて『 匂い沼 』が私は好きですね。確かにあの花の香りは人を惑わすでありましょう^^   私は毎年あの香で春の訪れを感じて心を浮き立たせますが、 あの薫香に気付くのは決まって夜道なんですよね。 私は著者の書くような粘りや生々しさは余り感じませんが、爽やかなようでいて妖しい不思議な香だと思います。名前も素敵ですよね^^ …と、 ちょっとネタバレになるので一応名前を伏せてはいますが、わかる人にはこの文章でわかっちゃうかなf^_^;) ただ、ひとつ本書について苦情を言うとすれば、字がでか過ぎです(-_-#)  どうりで安いと思ったよ…(-"-;)