『 ジョシュア 悪を呼ぶ少年 』 ( 2007・米 )

◆ ジョシュア 悪を呼ぶ少年 ( 2007年・アメリカ )

 監督:ジョージ・ラトリフ

 出演:ヤコブ・コーガン、サム・ロックウェル、ベラ・ファーミガ、ダラス・ロバーツ 他

 評価…★★★☆☆

<あらすじ>

仕事でそれなりの成功を収めているブラッドは若くして、ニューヨークの高級マンションに妻子と暮らしている。9歳の息子ジョシュアは頭がよく、聞き分けの良い優等生で、芸術的な才能もあるようで、彼らの自慢だった。妻のアビーは少々神経質なところがあり、気取った上流階級の連中との付き合いなどを嫌がっていたが、一家はまずまず幸せに暮らしていた。そして、待望の第二子が生まれる。かなりの間を空けてできた子供で、今度は女の子、しかも、ぐずらない育てやすい子だったということで、ブラッドとアビーはその子に夢中になる。

優等生のジョシュアは大人びていて手のかからない子供だったこともあり、妹に愛情を奪われたとぐずるようなこともなく、家の手伝いなども積極的にしてくれるし、全ては問題なく進んでいるように思われた。しかし、その幸せな生活は徐々に綻び始める。

最初のきっかけは赤ん坊だ。今まで静かだった子が突然夜泣きを始めたのだ。そして、昼間もぐずるようになる。ふつうでも辛い状況だが、アビーにはこれが激しいストレスになった。実は彼女は元々精神的に不安定なところがあり、ジョシュアを産んだ時も育児ノイローゼのような状態になったのだ。そして、完璧な優等生だったジョシュアも不可解な言動を取り出す。そして、ある時、学校でちょっとした事件が起こるが、自分たちのことでいっぱいいっぱいの両親は適切な対応ができない。もちろん、ブラッドもアビーもジョシュアを愛してはいるのだが、これまで完全だった彼にどうしたらよいのかわからないというのもあり、対応できないでいたのだ。それでも、賢いジョシュアは自力でなんとか立ち直ったようだった。

しかし、母親であるアビーは立ち直れないどころではなく、どんどん状態は悪化していき、それに対応するブラッドも追い詰められていく。そして、追い討ちをかけるように訪れる数々の不幸。そんな中で、ふと目にしたものから、ブラッドはジョシュアに疑念を抱く。今起こっていること全てはもしや…。


まぁ、何というか嫌な作品ですね(-"-;)

元々コドモが出るホラーやサスペンスが嫌いなのですが、これは加害者側みたいだし、たまにはいいかと思って借りてしまったのが間違いでした(T_T)

いや、面白いし、なかなかよく出来てるんですけど、結局のところ、全てはここん家のオヤジとオフクロが精神的に未発達だから起こったことなんじゃねぇの?と思わされてしまうのでね。別にジョシュアが「 悪を呼ぶ少年 」 とかなわけじゃないだろう、彼はむしろ被害者だろうと思うわけですよ。『 破壊者ベンの誕生 』 と設定は逆だけど同パターンの理不尽さというか、題名に偽りありというか。

※以下ネタバレ有り※

まぁ、お母様の方は精神的に病んでいらっしゃったりもするようなんですが、でも、自分でそれにきちんと向き合うことをず、対処もしないし、夫兼父親は何かてんでガキで、家事は少しは手伝うのですが、妻の精神的なフォローやケアは全くできてない。しかし、あのエキセントリックで外見的にも大して魅力のない女房を見捨てず、愛し続ける姿勢はエライけどな。

で、人並み優れた能力を持つのに、そんな両親の下で育ち、あることをきっかけに蓄積されていた不満とも狂気ともつかないものが表面化してしまい( しかも、これが表面化しても結構長い間気付かないダメダメな両親…)、結果的に罪を犯してしまうジョシュアがかわいそうで仕方が無い…と言いたいんだけど、これがまぁほんとに薄気味の悪い、愛情を持てない感じの子供なんですねぇ(-"-;)

すごくきちんとしてて、お利口で優秀なのですが、9歳なのに髪はびしっと七三で、家でもフォーマルな感じの長ズボンにシャツにネクタイというファッションなのですよ。あのくらいの年齢だと服とか自分で選ばないだろうと思うので、親の趣味なのかとも思うのだけど、両親はかなりだらしない感じのファッションだし。何故なんだろう?

確かにそういう部分で、見るからに普通じゃない子ってのは表現できるのだけど、どうしてそういう風になったのかを知りたいと思いましたね。こういう「 恐るべき子供だち 」 的な作品って、超自然的要素ありのものも現実的なものも含めて結構あるけど、彼らが何故そういう風になったかという理由はそれなりに示されているように思うのですね。生まれつき純粋に悪であるとか、無邪気に利己的であるとか、何らかの理由で心を病んだ結果であるとか、何者かに操られてであるとか。

でも、本作のジョシュアくんにおいては明確な理由がないように思えるのです。前述の通り、両親はかなりダメなのですが、別に愛情に欠けるわけでもないし、もちろん虐待もしてない。生後間もない頃は母親が育児ノイローゼだったみたいですが、その時にも別に虐待をしてるわけでもないし。その影響で他の人と比べると愛情が足りない時期とかがあったかもしれないけど、そういう描写もないし、そのくらいのことはどこにでもあることですからねぇ。

で、祖父母や叔父などとも交流もあるし、彼らにも愛されている。祖父母( 父方 ) と母の間にはちょっと問題がありそうだけど子供に影響するレベルではない。

服装などが異様なまでにきちんとしてるのはどうも本人の好みみたいだし、やりたくもないスポーツとかをさせられてるのは内心不満のようだけど、別にそんなにストレスであるようにも見えない。それに後にちゃんと「 やりたくない 」って言って、別にふつうに受け入れられてるしね。

エジプト神話だのミイラだの死だのに興味を持ってる風なんだけど、これが純粋に好んでのことなのか、何か目的があってのことなのかもわからないんですよね。映画的にも、こういうので超自然的要素もあるかもって思わせようとしてる感じもあるし。

しかし、この子役は凄いね。裏がありそうな無表情も嫌な表情もとても上手い。ちょっと顔立ちが特徴的なのもあるけど、子供とは思えない酷薄な雰囲気があるんだよねぇ。物凄く無邪気で明るい子供の役とかしてたりする作品があるんだったら、ぜひ見てみたいものです。彼ならきっと苦も無くこなすのであろうなぁ…。

ちなみに、ラストの自作の歌をピアノで弾き語りしての真実の告白には感心した( 歌がとても上手だし声もいい )けど、あそこで告白しちゃうのが所詮子供だよなぁとも思った。

かわいそうなジョシュアくんが、それほどまでに愛するおじさん( 余りそうは見えないんだけど、確かに両親に対するよりは親しい感じだった )と幸せに暮らせるといいのだけど、まぁ、それは告白してなくても有り得ない話だよなぁ…。高い知能と優れた才能があったとしても、今後の人生が明るく幸せなものになるとは思えないですよね。父親は多分今後社会復帰できないし、母親も危うい ( この人は元々危ういのだが )んじゃなぁ。あ、でも、経済的な余裕があって、施設に入ったりすることなく、青年になるまできちんと教育を受けてられるのなら、それなりに何とかなるかも。あのくらい頭が良くて実行力があれば大人になって何らかの分野で成功するのは多分たやすいでしょう。