『 難儀でござる 』 岩井 三四二

◆ 難儀でござる  岩井 三四二 (光文社時代小説文庫) \620  評価…★★★☆☆ <作品紹介> 甲斐勢は、攻め入ってきた駿河勢の退路を断ち、二千の兵を勝山城で孤立させた。甲斐国守護・武田信直は、今川の使者である老僧・宗長に兵の解放の条件として二万貫文を要求する。甘利備前は宗長との交渉役を命じられる。だが、相手はのらりくらりと連歌に精を出すばかり ― ( 『 二千人返せ 』 )。 歴史的事件の陰で理不尽な無理難題に振り回される男たちを描いた短編集。  ( 文庫裏表紙紹介文 )
著者の作品は初読なのですが、可も無し不可も無しと言った感じですね。 文句をつけるところもないけど、さほど感心するところもない、ごく平均的な面白さです。 題名のつけ方はちょっと変わってますけど、内容はごくスタンダードです。 まぁ、ちょっと期待感が大き過ぎたというのはあるかもしれないけど。 この書名と帯の惹句( 「 いつの時代にも、無理難題をふっかける 「 上役 」 がいるものです。 )はよく出来てますよねぇ。 一体どんな無理難題が?と、興味を惹かれてしまうもの。 でも、実際は時代小説( ことに武家社会中心 )においては、ごくありきたりなお話ばかりでした。 まぁ、時代小説を読む人の多くは斬新さは求めてないだろうから、それで全然いいんでしょうけど。 私も先入観無しに読めばもう少し面白く読めたかなという気もします。ちょっと視点が変わってたりする作品もあるし、地味ながらもそれぞれに違った味わいがあるんですよね。 あと、全ての作品の最後に物語のその後のような文章が付けられているのが、いいような悪いような…。実際の事件や人物を題材にしているので、当然あるべきその後を知りたいという思いはあるし、話によっては強くそう思うこともあるのですが、切り取られた物語は物語として完結してほしい気もするんですよね。 あ、「 蛍大名 」 というのはこの作品集で初めて知った言葉でした。 閨閥によって地位を築いたりした人のことをそう呼ぶんだそうです。つまり、親の七光りならぬ、女の尻の光のおかげってことだそうな。一見きれいな言葉なのに内容はえらく下司だよね…(-"-;) まぁ、面白いし、よくできてるとは思うけど。 以下は本書には関わりのない独り言ですm(_ _)m 好きだった作家さんの作品が変質してきたり、相変わらず好きだし面白いんだけど、いずれの作品もシリーズが長く続いてパワーダウンしてきたり…等々あって、新たなる時代小説作家を探している今日この頃なのですが、このジャンルはなかなか難しいですねぇ(T_T)  ホラーやサスペンスなどと違って、時代小説の場合は、きちんとした文章が書けて、そこそこ時代考証ができて、一応のお話が作れてれば、それなりに面白いんですよね。しかし、何、これつまんねぇ!というのが滅多にない代わりに、うわ、何かよくわかんないけど or めちゃくちゃだけど、これは面白いよってのは皆無に等しいし、正統派時代小説で文句なく面白いってのも、そうそうないんです…。 これは私自身の少々偏った好みのせいもあるのでしょうが、なかなかこれって言う作品に巡り会えません。対象となる作品が多いだけにやたらに手を出すわけにもいかないのですが、読まないと良し悪しはわからないし…。 しかし、一冊読み終わって、「 ああ、また今回もそこそこの作品だった… 」 と思う時の徒労感を味わうのが嫌(T_T)  まぁ、まだ最近期待の新鋭と言われる方々の作品がいくつか残ってるので、それらに期待しよう。