『 シアトル猟奇殺人捜査 』 ( 2001・米 )

◆ シアトル猟奇殺人捜査 ( 2001年・アメリカ )

監督:ウーヴェ・ボル/出演:マイケル・パレキャスパー・ヴァン・ディーン

評価…★★★☆☆

<あらすじ>

シアトル警察のレナートとドロシーは連続猟奇殺人事件の捜査に取り組んでいた。既に15人もの犠牲者を出しているこの事件は、最初の6人が目を抉り取られ、次の6人が耳を切り取られ、そして、最近の3人は舌が切り取られていた。犯人の意図はどこにあるのか?FBIに事件を乗っ取られる前に何とか解決の糸口を見出そうと焦るレナートたちだった。そんな折、新たな犠牲者の第一発見者として現れたトムがレナートの心にひっかかった。有名な投資家で富豪だという彼は、ハンサムで見るからにエリートと言った感じの青年なのだが、行動に若干不審な点があるし、何よりも彼の醸し出す雰囲気が不穏なのだ。これは絶対に何かあるとにらんだレナートとドロシーは彼を調べ始めるが…。


安くて下らなくて内容がない上に不自然な点が多々あるのですが、不思議と結構面白かったです^^; 金払って映画館で見せられたら激怒かもしれないけど、DVD5本セットの中の1本としては十分合格です。

※以下ネタバレ有り※

でも、これ、TV映画じゃないのが不思議なような作りですけど、俳優はそこそこ豪華ですよね? だからB級感が余りなくて、それなりに見られたのかなぁ?まぁ、個人的にキャスパー・ヴァン・ディーンが良かったというのもあるけど。彼を見てるだけで何となく面白いのですよ^^; いや、実に正統派の美形で肉体美でもあるので、見てるだけで結構満足というのもありますけど、基本的には私は男を見て喜ぶ趣味はないんですね(笑) 彼はどの映画でも同じルックスで同じ表情で出てくるんだなぁと思って感心してたのです^^; 結構設定の違う役なのに髪型とかも全然変えないのね。まぁ、似合ってるし、演じ分けられてないというわけでもないんだけど、その辺が何か面白くて。

何か面白いと言えば、熱血敏腕刑事(?)のレナート( マイケル・パレ ) も妙に面白い人だったな。冒頭の奥さんの趣味の写真サークルか何かでピンチヒッターを頼まれてヌードモデル( ほんとに全裸 )になるエピソードは、全く意味不明で全然面白くはないのですが、その後の真面目に行動しているシーンが何か妙におかしい。同僚の女性刑事の留守電に物凄く妙なメッセージ入れたりして、精神的に病んでるのかなという感じもありましたが、そういうのも含めて面白かったです。あ、この、私が何か妙で面白いなぁと思ったところは、見る人によっては意味不明でムカつくぐらいつまらないところかもしれません^^; 多分、キャスパー・ヴァン・ディーンが妙に面白かったのと同様にマイケル・パレも私には妙に面白い俳優なのでしょう。

で、普通に面白かったのは展開が物凄くムチャクチャなところですね。頭脳明晰で美形で、やり手の投資家で富豪というトムが、どうやら連続殺人に関わりがあるらしいという話から始まるのですが、非常に知的という設定なので何か策を巡らせて行動しているのかと思っていたトムが、何か 「 誰もほんとの俺のことを知らないんだ!誰も俺のことなんか愛してないんだー! 」 とか中学生みたいなことを言って暴走し始めて、最後には生放送のテレビ番組( 各界の有名人と司会者がトークするというアメリカによくあるヤツ ) の最中にいきなり司会者を斬り殺し、周囲の人々も次々と撃ち殺して逃走し、次には自分の婚約破棄パーティーの会場に二丁拳銃で躍り込み、その場の人を殺せるだけ殺して、最後に駆けつけたレナートに撃たれておしまいという清々しいまでのメチャクチャさ。まぁ、派手な殺戮シーンは好物なので、激しく突っ込みながらも( 皆逃げられるだろう!とか、逆に何故トムは逃げられるんだよ!とか、警察来るの遅過ぎるだろう!とか )なかなか楽しかったですけどね(笑) 津山三十人殺しを彷彿とさせる自分勝手で計画的な大量殺人ですね^^

それにしても、このストーリーのメチャクチャさは何なんでしょうね? トムの余りに無計画な犯罪行為と逆に計画的な日常の破壊から、最後は弾けて終わるんだろうなというのは割とすぐわかるんだけど、だったら最初の意味ありげな連続殺人のくだりいらないじゃん。こっちは連続殺人を目当てに借りたのにどうなってるんだ!サギじゃないか!と言いたくなりましたよ。( まぁ、途中からトムが愉快なので、いいかと思い始めたんですけどね^^;)

それに事件は解決したっぽい終わり方だけど、物凄い数の人が死んでるし、何もかもトムの思う通りですしねぇ。撃たれて幸せそうに死んでたもんね。そうそう、トムってば用意周到に自分の会社まで完全に破滅させて終わるんですよ ( 暴落を見越して株取引していたんです)。なんて嫌なやつでしょう^^; そして、こんなことをするに至った彼の心の闇などは全然描かれてないんですよねー。前述の通り、なんか「 周りの連中はみんな金目当てでオベッカばっかり使いやがって、俺のことなんか… 」って、大金持ちの家に生まれた孤独な少年か!(笑) 自らの能力で若くして財を成し、名声も掴んだ美形の青年はあんなこと思わないよ。不細工とかならともかく。あと、レナートに妙にシンパシーを感じてるようだったけど、そこも全然わからないんですよね。心が病んでるという点で同じ匂いがしたのかしら?でも、それはくくりが雑過ぎますよねぇ。そんなだったら、そこら中に仲間がいるっての^^;

不自然といえば、レナートの妻のサラが何故あの状況 ( 屋根から吊り下げられてて、ドアを開けると支えが外れて首が絞まるという仕掛けをされていた )で生きのびるんだよ!というのがあるのですが、あれはわざとなのかなぁと思ったりしてます。前述の通り、トムはレナートにシンパシーを感じていたみたいだったから手心を加えたのじゃないかと。じゃないと、あの仕掛けで生き延びられるわけがない。絞首刑と同じシステムなんだからね。窒息とかじゃなくて頚椎が折れて即死だよ。臨月で体重いんだしさ。

あと、レナートの相棒のドロシーはバカ過ぎますよねぇ。それなりのキャリアを積んだ刑事とは思えない不用意さ。まぁ、それで死ぬんだから自業自得ではあるけど、せめて、もう少しトムとの駆け引きみたいなのを見せて欲しかったものですよ。トムが出てくるまではかっこよかったのに、あの最期はないよなぁ。

( 8月末鑑賞分 )