『 太陽の塔 』 森見 登美彦

◆ 太陽の塔  森見 登美彦 ( 新潮文庫 ) ¥420 評価…★★★☆☆ <あらすじ> 私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。 ( 文庫裏表紙紹介文 )
※以下ネタバレ有り※ 著者の作品は以前から気にはなっていたんだけど、かなりアナクロな感じの男子大学生の話を今さ読みたくもないような気がして逡巡しているうちに結構な売れっ子になってしまって、ますます手を出しかねていたのですが、先日読んだ 『 臨死!!江古田ちゃん (3)  』 に本書がらみの四コマが載っていて、更にその後行った書店でフェアの関係で本書が平積みされており、ついフラフラと購入してしまったのでした。 で、やっぱり微妙な感じでしたねー。面白くないことはないし、好きなところもあるけど、全体的にイラっときたり、ウザく感じるところの方が多いかなぁ…。文章もなかなか上手いし、登場人物たちのわざとらしく衒学的で尊大なところや、その裏の自信の無さや弱さ、それら全部からくる妄想やバカげた行動なども悪くはないんだけど、今の私にはやっぱりちょっと合わないかなぁ。学生の時に読んだら凄く面白かったかもね。共感できないわけではないんだけどねー。 そう、この主人公をはじめとする男子大学生たちとは、きっと凄く仲のいいお友達にはなれる気がするし、お近づきになれるんならなりたいんだけど、お付き合いは絶対にしたくないと思うんだよねー(笑) あ、年齢が同じくらいだという前提での仮定の話ね^^;  江古田ちゃん )にもばっさり切られてたけど、全く同感ですね。 しかし、水尾さんのあの台詞は何度読んでもいいね。  「 私、部屋によけいなものが増えるのは嫌です 」 ( 主人公からクリスマスプレゼントに、太陽電池内臓で半永久的に手招きをするという招き猫を渡されての一言 ) ほんとそうだよねぇー。自分の欲しくないものはいらないよねぇー。全くヤツらは何故そんな簡単なことがわからないんでしょうね? さんざんヒントを与えているにも関わらず、こちらの欲しいものがわからないのも相当に許し難いのですが、欲しくないものを押し付けて、しかも、謝意まで要求するのはほんと許し難いですわ。水尾さんのようにきっぱりはっきり言ってやれたらどんなにすっきりすることでしょう。でも、私のキャラクターでそれを言うと、相手に深く強く恨まれる気がするなぁ。やっぱり、水尾さんだから許されるんだよねー。いいなぁ、天然不思議少女系は。  あと、これは別に作品自体に罪があるわけじゃないけど、どこがファンタジーノベル?って気もするけど、大賞受賞作なんだよねー。何故だ? まぁ、全編これ妄想だからファンタジーと言えなくもないのかなぁー。私は余り認めたくないけど、 この賞の選考基準がわからないし、特にこだわりのあるジャンルでもないから良しとしておこう。( でも、このブログでは 「 その他の小説 」 に分類しておきます^^; ) 。 あ、タイトルの 「 太陽の塔 」 が、ほんとにあの太陽の塔そのものだったのにはちょっと笑ってしまいました^^; 確かにかなりの数の人々が、あの恐ろしい破壊力のある芸術作品が、ごく身近なところにある環境で生活しているんだよなぁ、考えて見るとそれって凄いことだわと感心していると、解説を書かれている本上まなみ氏は、まさにそういう人々のひとりだったことが判明して驚き、かつ感心しましたね。家から太陽の塔が見える生活って凄い(@_@;) そんな幼少期を送ったら人格形成に確実に何らかの影響がありそうだ…。 まぁ、著者のセンスや文章自体は嫌いじゃないので、男子大学生ネタじゃない他の作品も機会があったら読んでみようかなぁ。それまでは作家としての評価は保留ですね。