『空中ブランコ 』奥 田 英朗

◆ 空中ブランコ  奥田 英朗 (文春文庫) ¥500  評価…★★★☆☆ <作品紹介> 伊良部総合病院は現代的で清潔な感じの大病院だ。しかし、そこの跡取り息子が担当する神経科は一風変わっている。まず、何故か地下にある。更に、一人しかいない看護婦は無愛想でミニスカボディコンの白衣を着用している。 そして、何より変わっているのはそこの医師だ。かなりの肥満漢で、声が甲高く、人並みの礼儀を弁えているのかどうかも怪しい言動であるのはともかく、彼は神経科にも関わらず訪れた患者にまず注射をしようとするのだ。その様子からして、どうやら注射フェチであるらしい。そして、その後の問診においても治療行為においても、彼の言動は患者が自らの悩みを忘れて医師の正気を疑うほど珍妙だ。しかし、そんな彼の言動に付き合ううちに患者たちは次第に自らの問題を解決していることに気付く。 トンデモ精神科医・伊良部シリーズ第二弾。空中ブランコが飛べなくなった花形サーカス団員の話である表題作他、『 ハリネズミ 』( 尖端恐怖症のヤクザ )、『 義父のヅラ 』( 強迫神経症の大学病院勤務医 )、『 ホットコーナー 』( スローイング・イップスプロ野球選手 )、『 女流作家 』( 嘔吐症と強迫症の女性作家 )の全5篇を収録。
イン・ザー・プール 』以来、久々のトンデモ精神科医・伊良部シリーズです。ちなみに直木賞受賞作。 で、まぁ、相変わらず面白かったことは面白かったのですが、2作目にして随分パワーダウンしている感じは否めないですね。何か伊良部がフツーにいい人に見えちゃうんだよねぇ。境界線とかじゃなくて意識して計算してやってる名医なんだって感じがする。症例は変わってるけど患者自身は一般人だった前作と比べて、今回は患者自身がちょっと特殊な存在のせいもあるかもしれないけど。で、いい話感も今回の方が強いんですが、私にはそれもちょっとなぁ…って感じがします。まぁ、不満というほどではないので次作以降も見守りたいと思います。 本筋とは関係ないですが、「 大井一丁目 」を「 天丼一丁目 」に書き換えるイタズラ(『 義父のヅラ 』 )には膝を打ちましたね^^ 「 金玉神社前 」は低俗過ぎですが^^; あと、前作は松尾スズキ主演(と言っていいのかな?要するに伊良部役なのです)で映画(『イン・ザ・プール』)にもなっていて、これもかなり良かったんですが、本作は伊良部がかなりの肥満であることを全面に押し出した感じ(特に表題作)が強いので、同じメンバーだと続編は難しいですねぇ。松尾スズキ演じる伊良部医師はかなりいい感じだったので残念。