『床下仙人』 原 宏一

床下仙人  原 宏一 (祥伝社文庫) ¥580  評価…★★☆☆☆ <作品紹介> 「家の中に変な男が棲んでるのよ!」念願のマイホームに入居して早々、妻が訴えた。そんなバカな。仕事、仕事でほとんど家にいないおれにあてつけるとは!そんなある夜、洗面所で歯を磨いている男を見た。さらに、妻と子がその男と談笑している一家団欒のような光景を!注目の異才が現代ニッポンを風刺とユーモアを交えて看破する、“とんでも新奇想”小説。 (文庫裏表紙紹介文) 他、『てんぷら社員』、『戦争管理組合』、『派遣社長』、『シューシャイン・ギャング』の全5篇を収録。
うーむ。文庫裏のあらすじを見る限りあんまり感心しないが、書店POPでやたら誉めてるし、折り返しではイッセー尾形が誉めてるし、解説は関口苑生かぁ…、一応いっとくか。あ、この人、確か『 かつどん協議会 』っていうバカな小説書いた人だよな。あれはなかなかだったから、よし購入決定! ……というような内心の検討を経て購入したのですが、うーん、まぁ、これは騙されたとしか言いようがないなぁ(-"-;) まぁ、そもそもカバーに『新奇想小説』なんて入ってる時点で気付くべきだったよね。やれやれ。 ただ、一点フォローしておくとすれば、新刊かと思って買ったこの本は、実は初版は平成13年で親本は平成11年発行なのでした。だから、平成19年も暮れようとする今読んで、内容がズレてる感じがするのは仕方がないと言えなくもないでしょう。でも、ほんとの意味で奇想小説だったら何年後に読んでも古くは感じないと思うけどね。 ※以下ネタバレ有り※ 基本的に私は日常からかけ離れた話が好きなんですね。だから、ホラーやSF、時代小説や海外ミステリを好んで読むのです。でも、日常から乖離しているというのとリアリティがないというのは一緒にして欲しくないんですよね。特にホラ話を語るには細部のリアリティは重要だと思うんです。まぁ、物凄い力技でねじ伏せてくれる場合などはこの限りではありませんが(笑) でも、本書の場合はみんな細部になんかムリや矛盾があるんですよね。例えば表題作。そもそも、いくら寂しいからって、床下に不法侵入してるホームレスなんかに心を許したりしねぇよ、女なめんなよコラと言いたいが、そこを譲るとしても夫を閉め出すとか、その結果床下男が家と家族を乗っ取るとか有り得ねぇだろうよ。そもそも、閉め出されたと言っても鍵の110番か何か呼べば簡単に入れるし。まぁ、それは言わないとしても、専業主婦なんだから夫無しではたちまち収入が途絶えるし、離婚訴訟したら完全に負けるよ。夫が家庭を顧みないと言ってもマジメに仕事してただけだし、自分はそういう状況を改善する努力もせずに間男(性的関係はないと言ってるが、この場合同じことだ)してたんじゃねぇか。てゆーか、そもそも床下に入り込めやしねぇよ。まぁ、これを言ったら全てがおしまいだが。 まぁ、そんな感じで、とにかく設定にムリがあり過ぎ。一生懸命働いてるらしい夫の仕事内容にも全くリアリティが感じられないしさ。一体何の会社でどういう仕事してんの?仕事内容にしても社員の扱いにしても、こんな会社ないと思うけど。私は妻だけど夫の方に感情移入しがちという人なので、余計ダメなのかもしれないけど(でも、それなりの仕事してたorしてる女性はみんなそうじゃないかなぁ)、この作品はほんと気に入らない。 あとは、うーん…、『てんぷら社員』は平成11年当時に読んだら面白かったかなという気はする。相変わらず女に魅力がないけど。ああ、そういえばこの人の作品って女に魅力がなさすぎるな。別に男に魅力があるわけでもないけど、女性の登場人物が何かみんな変。女嫌いなのか女慣れしてないのか知らないけど、どうかと思う。 …と、これだけ貶しといてなんですけど、『 かつどん協議会 』は私は結構好きです^^; 私がカツ丼が好きだというのもあるけど、凄く美味しそうでバカバカしくてよかったですよ。