『タルタロスの審問官』 フランク・ティリエ

タルタロスの審問官  フランク・ティリエ/ 吉田恒雄 (ランダムハウス講談社文庫) ¥945  評価…★★★☆☆ <あらすじ> パリ警視庁警視シャルコは45歳。愛する妻と二人暮らしだ。しかし、半年前のある夜突然妻が失踪した。状況から見ると拉致もしくは誘拐されたものと思われるが、犯人からの要求などもなく手がかりは全くない。シャルコは本業の捜査のかたわら、必死に妻の行方を探す。 そんなある日、女性の惨殺死体が発見される。それはSM的な責め苦を受けた上に異常な儀式を施されたと思われる見るも無残な死体だった。常にない衝撃を受けつつ帰宅したシャルコに隣人の老婆・カメリアが妙な予言をする。比較的親しく付き合っているシャルコは彼女に不思議な力があるのを認めているので、失踪した妻や惨殺事件のことと合わせて眠れない夜を過ごす。そして翌日、シャルコは自分のEメールボックスの中に犯人からのメールが届いているのを発見する。 友人でコンピューター関係に詳しいトマや犯罪心理学者のエリザベス、そしてカメリアらの手を借りて捜査を進めていくうちに、おぞましい真相が明らかになっていく。果たして愛する妻は今…?
※以下ネタバレ有り※ 先日の『エナメルを塗った魂の比重』に続いて、「こりゃないだろ」ってミステリーの登場です^^; まぁ、サスペンスだと思えばいいのかな。でも、紹介文にあるようにノワールでは断じてないです。まぁ、私はアブノーマルもグロも嫌いじゃない(っていうかむしろ好き^^;)ので結構面白く読みましたが、一般のミステリファンやノワールファンにはおすすめ致しかねますな。SFでもホラーでもないのに超自然な要素(カメリアの予言、途中からはエリザベスも)を入れるのは頂けません。ミステリーとしては完全な禁じ手です。 犯人は実は凄くわかりやすい人物だったのですが、私はうっかりしてて気付かなかったので珍しくびっくりしちゃいました^^; でも、あんな最初から協力してたトマが犯人ってのもちょっと反則よね。それと犯人解明のヒントになるのが統合失調症の身内の存在ってのがちょっと嫌な感じ。それが共通点で親交が深まったというような話なんだけど、その設定がそもそもおかしい。何の必然性もないんだもの。同じ悩みを持つ立場として親しくなったというようなことがいいたいんだろうけど大して説得力がないんだよね。別にガーデニングが共通の趣味でとかでも支障無い感じだし、そのヒントの提示の仕方もなんか凄く嫌な感じ。 あと奥さんだけ母子ともに助かっちゃうのも何だかなーって感じではある。続編があるそうだけど、そこでは奥さんは社会復帰してんのかな。 そこそこ長編なんだけど扇情的なだけで大して中身がないから、安い感じのサスペンス映画の原作に最適だなぁ。どっか作らないかしら。でも、その場合は題名はもっとキャッチーな感じにした方がいいな^^;