『 ウォッチメイカー 』ジェフリー・ディーヴァー

ウォッチメイカー〈上〉 (文春文庫) ◆ ウォッチメイカー〈上〉  〈下〉  ジェフリー・ディーヴァー/訳:池田 真紀子 ( 文春文庫 ) 各\770、\720  評価…★★★☆☆ <作品紹介>  「 ウォッチメイカー 」と名乗る殺人者が現れれる。その手口は残忍で、いずれの現場にもアンティークの時計が残されていた。やがて、犯人が同じ時計を10個買っていることが判明する。つまり、被害者候補はあと8人いることになる。―── 尋問の天才ダンスとともに、ライムはウォッチメイカー阻止に奔走する。 一方、ライムの公私にわたるパートナーであり、文字通りライムの手足代わりでもある存在のサックスは、公認会計士が自殺に擬装して殺されたらしいという別の事件を抱えていた。自らのキャリアアップのため、通常ならしないライムの事件との並行捜査を続けるサックスは、一見単純に見えた事件の裏に大きな陰謀があるらしいことに気付く。どうやらNY市警の腐敗警官が関わっているらしいのだ。身内に対する捜査は難航する上に、単身で捜査を続けるサックスの身に危険が迫ってくる。 二つの事件はどう交差しているのか!? どんでん返しに次ぐどんでん返し。あまりに緻密な犯罪計画で、読者を驚愕の淵に叩き込んだ傑作ミステリ。シリーズ第7弾。  ( ※各巻の文庫裏表紙紹介文を合わせて、一部アレンジしました ) ※2007年度「 このミステリーがすごい! 」第1位、「 週刊文春ミステリーベスト10 」 第1位、 「 日本冒険小説協会大賞・海外部門 」 大賞。
このシリーズは最初の2作ほどを読んだのだが、その後は犯罪の内容がいまいち興味を惹かなかったため放置していたのだよね。 でも、本作は帯の惹句( 犯人が魅力的とか、仕掛けが素晴らしいとかいうのね。帯が手元にないのできちんと引用できなくてすみません )と華々しい受賞歴 ( どれも結構怪しい賞だけどな^^; )にまんまとひっかかってしまって、つい久々に購入してしまった。 で、面白かったことは面白かったんだけど、そして、意外な結末に驚かされたことも確かなんだけど、この作者の場合、これがある程度パターンなんだよね。順当と思われた犯人とその動機が2回、3回と覆されるっていうの。だから、ある程度予期しながら読んでしまう。 で、こういうこと言うのは何だけど、『 CSI:科学捜査班 』 みたいな犯罪ものの海外ドラマを見てて、「 ああ、こいつ凄い怪しいけど、残り時間からすると真犯人は別だな 」 とか思うのと同じで、残りのページ数から考えて、どう考えても話が二転三転するってわかっちゃうんだよね。 シリーズ初読ならそれでもいいだろうけど、何かもう少し何とかならないのかなぁと思ってしまう。 それと、結局のところ、私は異常心理による犯罪が好きなのね。いや、職業殺人者も十分に異常な心理であるし、本作における犯人はかなり興味深い精神構造ではあるけれども、余り病的じゃないんだよな。いや、これも正確じゃないか。病的だけどウェット感がないというか、怖さや気味悪さを余り感じないんですよ。職業ということが介在するとそうなるのかなぁ。 まぁ、物凄く鬼畜な発言であるのを承知で言えば、私は同じ連続殺人なら猟奇的で陰惨な異常者によるそれが読みたいんだな。うん。 本書で初登場の「キネシクス」を駆使する捜査官キャサリン・ダンスは、魅力的であるんだけど、同時に何というか嘘っぽいというか卑怯な感じが否めない。私、心理学だのプロファイルの類は好きなんだけど、同時に懐疑的なのだよな。 でも、キネシクスによる捜査というか尋問は、映像にしたらかなり面白いだろうな。よく占いかよとか揶揄されるプロファイルと違って、根拠が目に見える上に、解答もすぐ現れるもんね。 (10.12.28読了) ここからは、今日現在の記述。本書の感想よりこっちの方がはるかに長くなるかもf^_^;) ディーヴァーの確かに面白いんだけど何かダメな感じを追究するために、手元にあったシリーズ2作(『 コフィン・ダンサー 』『 ボーン・コレクター 』)を読み返し、更に書店に行ってシリーズのうちで比較的興味をひく題材の1冊( 『 12番目のカード 』。文庫は上下巻だから正確には2冊だが )を新たに購入して読破してみたのですが、これはやっぱりこのシリーズが私に合わないのかなという結論に思い至りました。 感想にも書いているように、このシリーズには明確にパターンがあるのですね。何回かどんでん返しをするとか、いかにも怪しい人は犯人じゃないとか、犯人が早い段階で捕まった場合は動機や目的が想定と違うとか、共犯や黒幕がいるとか。あと、犯人は確かに異常者ではあるんだけど、その手口は計算されたビジネスライクなものがほとんどで、いわゆる猟奇犯罪とかシリアルキラーという感じではないのですね。私が最も不満なのは多分ここです(^_^;) ここが魅力的(ってのも変な表現ですが…)なら、他の部分の不満には目を瞑れるのですが、ここが肩透かしだったり引っ掛けだったりするので、他の不満も際立ってくるわけですよ。 それと、これは明らかに私が不当な文句を言っているとは思うのですが、私はこういう仲良しメンバーの揃ったシリーズ物というのがどうも好きじゃないのですね。このシリーズを好んでいる方々のほとんどの方が、きっと最も評価している部分の1つであろうと思われるところを真っ向否定するのもなんですけど、ちゃんと自分が圧倒的マイノリティだって自覚してますし、皆様方の判断に文句をつける気などさらさらございませんのでf^_^;) キャラの立ったシリーズ物っていうのは好きなんですよ。そのシリーズを続けて読んでいるからわかるお約束的なのも嫌いじゃないし。でも、必要以上に仲良しグループみたいなのとか、妙に愛情に満ち溢れていたりするのが嫌いなんすわ。 更に言えば、最も嫌いなのは主要メンバーの男女が恋愛関係にあること。海外ミステリ、サスペンスには結構多いんですが、私、これが本当に我慢なりません(-"-;) B級、大作に関わらず映画でよくある最後の大団円のときにくっつくのなら、まだ勘弁してやるのですが、仕事とプライベートは分けろよ!!!と言いたい(-"-;) 人間らしい感情を持つなというわけではないのですよ。尊敬できる上に気の合う異性とずっと過ごしていたら、そういう気持ちを抱くのは自然なことだとは思います。でも、それを押し殺すべきでしょう! もしくは、自分の気持ちにはっきりとは気付かないでいるというのがいいな。恋愛感情を押し殺して云々とかいう描写読むのもめんどくさいし。 またドラマを引き合いに出して恐縮ですが、『 BONES 』のブレナンとブースみたいにビジネス上の大事なパートナー兼友人に対する感情だと双方思い込んで、奥底の感情に目を向けず、宙ぶらりんにしておくのが好ましいです。周囲は見て見ぬふりをして欲しいですね。あのドラマの場合は、主役2人が、かなり不自然でわざとらしい上に周囲がやたらにくっつけようとするのですが、あのドラマは恋愛至上主義の上にセックス依存症の傾向があるから、マジメに俎上に上げてはいけません(^_^;) まぁ、そんな考え方の私にとっては、このシリーズのライムとサックスの関係は正直最悪です。そういう関係になるまではよかったんですけどねぇ。百歩譲ってプラトニックだったら許すんですけど、この2人は様々な苦難を乗り越えてちゃんと肉体関係結ぶんですよ。ライムの肉体的な設定を考えると、それは色々な意味で素晴らしいことで、評価されるべきことだというのは理解できるのですけれども、私はそういうのも含めて嫌なのですな。 ちなみにその後、ディーヴァーの初期作品を探して何作か読んでみたら、これがなかなかいい。ていうか、こっちの方が断然いい^^;  確かにこなれてはないし粗もあるんだけど、純粋に好みの問題だね。やたら捻ってるけど展開は想定できるのとか、妙に映像的な感じがする作りとかは、現在と結構共通するのですが、単発だと余り気にならないし、犯罪も犯罪者のタイプも私好み^^ そして更に言うと、登場人物が皆微妙に感情移入しにくいとこもいいかも。何か皆ちょっと変だったり嫌なヤツだったりするのね。あ、そう思うのは私だけかもしれませんがf^_^;)  ちなみに、ライムとサックスには色々と不満はあるけど、基本的にはいいヤツらだと思っていますよ(笑)