『 誘拐の誤差 』 戸梶 圭太

誘拐の誤差 (双葉文庫) ◆ 誘拐の誤差  戸梶 圭太 ( 双葉文庫 ) \800 評価…★★★★☆ <作品紹介> 「 礼乎(レオ・10歳)が学校から帰ってこないんです 」 ― 母親からの届けを受け、警察が捜査を開始。何の手がかりもつかめないまま時間だけが過ぎ、礼乎は死体となって発見される。その直後、身代金を要求する連絡が入る。いったいどうなっているのか。捜査は暗礁に乗り上げるが、その原因は警察内部にあったのだ。ゾッとする怖さを秘めた異色の警察小説。 ( 文庫裏表紙紹介文 )
文庫裏紹介文と帯の惹句には頷けない( 特に後者ね。異色ミステリなのかなんて期待して読む人がいたらどうするんだ。まぁ、ある種のサスペンスではあるけどな^^; )けど、面白いのは確かです。 実に戸梶圭太らしい作品です。相変わらずの己れの欲望だけに忠実な安いバカ ( 一見安くないヤツも含む ) ばっかりの登場人物に食傷しつつも、やっぱり感心する。特に少年殺害犯の須田の人物造型が秀逸。 私は、幸いなことに現実にこういう人物とお付き合いはないのですが、昨今頻発する信じられないような短絡的な事件などからして、程度の差こそあれ、現代日本には確実にかなりの数のこういう人間が存在するのだろうなと思う寒気がします。そして、表立って問題はなくとも似たような精神構造の人間はさらに数多く存在するのだろうなと思うと、早晩この国は滅びるよなと思わざるを得ません。 いや、実際のところはわかんないすけどね。映画 『 26世紀少年 』で描かれているみたいにバカほど生命力強いってこともあるしね。 ちなみに紹介文には 「 異色の警察小説 」 なんて書かれているように、事件捜査をする警察の様子なんかも結構詳細に描かれているのですが、まぁ、この辺はリアルな部分もあるけど、悪意あるパロディだと思った方がいいかと。 私はどっちかというと性悪説なんですが、トカジ作品を読むと逆に性善説に傾きますね。 「 いやいやいや、世の中こんな人間ばっかりじゃないよ!もっとマジメに一生懸命生きてる善良な人間もたくさんいるよ! 」 って気分になる^^; しかし、戸梶圭太にしても新堂冬樹にしても、何だか最近過剰になり過ぎて逆に面白くなくなってきたなぁ。このテの下流ノワールみたいのってエスカレートすればいいってもんじゃないんだよね。安い人たちの行動原理って決まりきっているので、どうしてもワンパターンになりがちで、それを補うためにエスカレートしていくんだけど、行動原理が金とセックス、せいぜい加わって見栄とかメンツぐらいでは複雑になりようがないんだな。 まあ、大半のフィクションの登場人物の行動原理は飾り立ててるだけで同じかもしれないが、飾り立てる余地があるかないかで結構違ってくるんだよな。いかにもっともらしく性欲を愛と言い換えるかってのが恋愛小説とポルノの差だもんね。