『 なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日 』門田 隆将

なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日 (新潮文庫) なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日 門田 隆将 ( 新潮文庫 ) \540 評価…★★★★★ <あらすじ> 1999年、山口県光市で、23歳の主婦と生後11カ月の乳児が惨殺された。犯人は少年法に守られた18歳。一人残された夫である本村洋は、妻子の名誉のため、正義のため、絶望の淵から立ち上がって司法の壁に挑む。そして、彼の周囲には、孤高の闘いを支える人々がいた。その果てに彼が手にしたものとは何だったのか。9年に及ぶ綿密な取材が明らかにする一人の青年の苦闘の軌跡。  ( 文庫裏表紙紹介文 ) 様々な犯罪が気になる人はもちろん、ニュースに少しでも興味がある日本人なら知らない人はいないであろうと思われる、かの有名な光市母子殺害事件、その事件の被害者の最も近い遺族である本村洋氏の事件遭遇時からその後の様々な闘いについてを描いた作品です。 一応、★付けてますけど、本書についてはそんなものは無意味です。
まず、非常に個人的な感想をいえば、私は本書の意外な薄さに驚きました。 だって、9年にわたる本村氏の闘いを我々も報道等で目にしておりますし、それに加えて密着取材した知られざる事実があるというのにこんなもので収まるの??? と不思議に思ったのですが、読み始めると内容の余りの濃さというか、重さに打ちのめされ、ああ、これで適正なのかもと思いました。冷静に考えれば、もっと知りたいと思うこともあるかもしれないのですが、少なくとも読直後から今に至るまで物足りないと思ったことはありません。 実は、私は本村氏と年齢も出身地も居住地も非常に近いのですね。しかも、本書で初めて知ったのですが、同じ学校の通っていたこともあったりするのです。発生当時はあんな場所でこんな猟奇的な事件が!? と、正直なところ、相当に浮ついた興味本位の気持ちで報道を追っていたのですが、色々なことを知るにつれて、余りにも全てがリアルでいたたまれない気持ちになりました。 その後、犯人が捕まってからは、余りにひどい動機、余りにひどい裁判の展開等々あり、それに対応する本村氏の変貌ぶり等あり、実際に何もできないし、してはいないのですが、本当に心の底から応援していました。そして、一応納得できるような結果にはなったのですが、本書を読むと更にいたたまれない気持ちになるような情報があって、もう本当にどうしたらいいんだかという感じです(T_T) 私は、性犯罪系殺人に関しては、どんな事情があっても、その後どんなに更生したとしても犯した罪は消えないとする派なので、犯人Fに対する断罪の思いは全く揺らがないのですが、本書を読んで少しだけ心が動いてしまいました。いや、罪を許す気は全くなく、死刑になればいいと思ってはいるのですが、最後の裁判であんなトンデモなこと( 山田風太郎ファンとしても許し難い! )を平然とぬかしやがったヤツがこんなことを言えるようになっているのであれば、死ぬ前に少しは話を聞いてあげるべきなのではないかなと。その反省が本当であれ、偽者であれ、確実に何かの役に立つように思えてしまったのでございます。 私は絶対に死刑はあった方がいいと思うんですね。それは目に目を的な気持ちも若干ありますが、この世には更生し得ない人間がいるということと、死ぬという時点に至らなければ反省ができない人間がいるということ、そして、犯した罪は償わねばならないということからくるのです。自分自身、かなり異端な人間であるけれども、それでも社会に害を為す異端者は許せないというところを理解していただければなと思います。 ああ、基本情報だけとか言いつつ、結構ぐだぐだ書いてしまったな(>_<)  いつかもっとちゃんと書ければいいんですけど。 とにかく、この世から理不尽な犯罪、特に弱者を対象にした暴力的なそれがなくなることを心から祈って止みません。 あと、本書の中でも紹介されています『 犯罪被害者の声が聞こえますか 』 は、犯罪とか裁判とかに興味のある人には必読の書だと思います。私は余りの内容に、辛くて苦しくてなかなか読了できませんでした(T_T) でも、犯罪や裁判、法律に興味がある人のは絶対に読んで欲しい本です。 できるなら、そういうのに興味がない人にも読んで欲しいです…。 ついでに言えば、本書も旅行に行く時に読む本を探して入った本屋で見つけて、内容がわかってるんだからやめればいいのにうっかり買ってしまい、涙しながら現地に着きました(;_;) まぁ、本書はやりきれない思いは物凄くありつつも、一応勝利したって形で終わっているんで、まだいいんですけどね。