『 オブセッション 歪んだ愛の果て 』 ( 2008・米 )

オブセッション 歪んだ愛の果て [DVD]

◆ オブセッション 歪んだ愛の果て ( 2008年・アメリカ )

 監督:スティーヴ・シル

 出演:ビヨンセ・ノウルズイドリス・エルバアリ・ラーター、ジェリー・オコネル 他

 評価…★★★☆☆

<あらすじ>

副社長への昇進を機に新しい家に引越ししてきたデレク一家。結婚3年目だが夫婦仲は新婚同様で、息子も順調に育っており、裕福で美しく、絵に描いたような幸せな一家だ。いわゆるヤングエグゼクティブとして独身時代は浮名を流したデレクは、元秘書であるシャロンと結婚したことにより会社にも逃げ場がないような状態であることや、家庭第一の生活にちょっと嫌気が差すこともあったが、それはほんの一時のことで不満というほどではない。妻も息子も心から愛しているし、仕事も順調で楽しい。

そんな彼に、ある朝エレベーターで一緒になった女性が話しかけてくる。今日からデレクの会社に派遣社員として来たのだという。初対面なのにちょっと馴れ馴れしい気もしたが、若くて美人でスタイルのいい彼女に親しげにされて悪い気はしない。彼の業務に派遣社員が絡んでくることはないし行きずり同然だ。軽い気持ちで、ちょっとした冗談を仕掛けたりして、その場を後にした。

ところが、週末を挟んで出社すると、その女性リサが彼の秘書の席に座っていた。秘書のパトリックが病欠で代打だというのだ。シャロンとの約束で女性秘書を置かないことにしているし、そもそも来たばかりの派遣社員が秘書というのも不安だ。相変わらず親しげで、秘書になれて嬉しそうにしているリサに、デレクはちょっと鼻白みながらも週初めの打ち合わせを始める。すると、彼女は思いのほかに有能だった。ただ、来て2日の割に情報を知り過ぎている気もするし、仕事中も視線を感じる。若い美人に好意を持たれるのは悪い気はしないが、社内での面倒はごめんだ。しかし、具体的に何があるわけでもないし、面と向かうと冷たくするわけにも行かず、日々を重ねるうちにリサの方の好意は募っていくようだった。

そして、社内でのクリスマスパーティーの日に決定的なことが起こる。普通ではちょっと考えられないような強引なやり方でリサが迫ってきたのだ。余りのことに怒りを露にするデレクにリサはきょとんとした様子だ。 「この女は普通じゃない 」 と確信し、何とかしようと決意したデレクだったが、時既に遅く、リサの妄想は取り返しのつかないところまで進んでいた。そして、彼女の更なる攻撃が始まる。


※以下ネタバレ有り※

何でだかヒロインが歌姫ビヨンセだというので微妙に敬遠していた本作なんですが、見てみたら意外に面白かったですね。突っ込みどころは結構あるけど、対照的な美女ふたりがその魅力を存分に振りまき、最後には肉弾戦まで繰り広げてくれるんだから面白くないわけがない(笑)

ごく一般的な、地べたを這いずりながら暮らしている中年女性としては、登場人物の女性いずれにも好感が持てないのみならず、その言動等にも共感致しかねるのですが、どっちも物凄い自己中で嫌な女だけど非常に魅力的なのは確かなんですよ。全く手を出さなかったデレクに心からの賞賛を送りたい。あんな目に遭わされるぐらいだったら一度くらいヤっときゃ良かったんじゃねぇかと思いつつ、いや、ヤってないからこそあれだけ強気に出れるのか、男はヤった経験があると弱いからな、うーむ、いずれにしても偉いよ、デレクとか思いながら見てました^^; 

まぁ、本作の場合は一般的な欧米のストーカーものとちょっと異なる点があって、主人公が黒人男性、その妻も黒人、そして、ストーカーは金髪の白人女性なのです。 別にストーカーとか関係なく、欧米における男女関係で、こういう取り合わせって色々な意味でちょっと難しいですよね。 

デレクはリサのセクシーな脚を見るくらいのスケベ心はあるけど、多分本来的にはゴージャスな黒人女性が好きなんでしょうね。その辺の好みはなかなか変えられませんからね。そういう意味でデレクは実にラッキーだったと言えましょう^^; リサは確かに魅力的だけど、ビヨンセ演じるシャロンに比べると全くもって貧弱なのですよ。同じ白人女性でもマライア・キャリーとか、歳は食いすぎだけどマドンナとか、そんな感じだったら太刀打ちできたかもしれませんがね。 違うタイプをつまみ喰いしたいって人もいるけど、それであっても余りにかけ離れた相手というのは余りないんじゃないですかね。

まぁ、そういう話はともかくとして、リサの妄想から来る行き過ぎた行為も面白いし、最終のリサ対シャロンキャットファイトも素敵です^^; 

リサの妄想がどういう質のものなのか( 病院に入らないといけないレベルなのか、ギリギリなのか、今回だけなのか、前科があるのか等々 ) 全く明らかになっていないどころか、リサがどういう人間なのかも全然明らかでなかったりと、お話としては結構お粗末なんですけどね。

素材的にはほんとはもっとリアルに怖い話にできると思うんですよ。若くてキレイな女が被害者面して上層の男を告発したら、大抵の場合はうまく行くんじゃないかと思うんです。 しかも、リサは頭も切れるようだし、もっと緻密に追い詰めたり、破滅させたりできたと思うし。 そういう意味ではちょっともったいない気がします。 しかし、まぁ、本作はきっとキャットファイトを描きたかったのでしょう。そして、観客もそれを見たかった ( 私だけか? f^_^;) 。 なので、問題はないではないけど、丸く治めておきましょう、めでたしめでたしと(笑) 実際なかなか見ごたえのある闘いでしたし、リサの最期はなかなかに悲惨で、ちょっとホラーな感じすらありますし。

うーん、こういうのもある種のアイドル映画なのかな。いや、ビヨンセの演技は結構悪くないと思いますよ。だから、それもちょっともったいない感じです。もう少しマジメにお話作れば良かったのに。

あと、どうでも良い話なのですが、邦題は 『 オブセッション 』つまり、『 obsession 』( 名詞 ) なのですが、原題は『 obsessed 』( 形容詞 )なのですね。 まぁ、確かに名詞の方がカタカナにしても何となく聞いたことあるかな?って感じかもしれないけど、それで変な副題付けるくらいなら何かいい題名考えろよって思ってしまうなあ。

ちなみに、原題だと意味は 「 取りつかれた 」になって、するとデレクとリサの両方に掛かるのかなって感じで、なかなか上手いなぁと思いました^^ 英語の題名ってこういう感じでシンプルなんだけど、二重に意味を持たせたり、掛けたりしてるの多いですよね。確かにそういうのを邦題にするのは難しいだろうけど、そこは何とか頑張って欲しいなぁ。カタカナ英語題名嫌いなんだよ…。

実は、私も今回記事をアップするのに良い和訳を考えようと頭を捻ってみましたが、やっぱり思い切って原題から離れたような感じじゃないとピンとくるのはできなかったですね。 このブログの場合はもしかして、映画の説明を探しておられる方が辿り着いたりするかもしれないので、原題が類推もできないような記事タイトルをつけるのは遠慮しましたが、配給会社にはそれも許されているんだから己のセンスを試して欲しいものですわ。ちなみに、私が捻り出したのは 『 愛し過ぎる女 』 。 ちょっと昔の映画にこういう題名よくありましたよね^^; あと、原題の感じをできるだけ生かして『 囚われる 』 とか。やっぱ、センスないっすかね…f-_-;)