『 邪魅の雫 』 京極 夏彦

◆ 邪魅の雫  京極 夏彦 ( 講談社文庫 ) \1,470  評価…★★★☆☆ <あらすじ> 江戸川、大磯で発見された毒殺死体。二つの事件に繋がりはないのか。小松川署に勤務する青木は、独自の調査を始めた。一方、元刑事の益田は、榎木津礼二郎と毒殺事件の被害者との関係を、榎木津の従兄弟・今出川から知らされる。警察の捜査が難航する中、ついにあの男が立ちあがる。百鬼夜行シリーズ第九弾。  ( 文庫裏表紙紹介文 )
あくまでも分冊にしないという著者の主義( 最近は分冊版も出てますが…)に大いに共鳴してはいるのですが、本書はさすがに厚過ぎるのではないでしょうか(T_T) だって、置いてるだけで自重で本が傷んでいくんですよ(>_<) 当然どんなに大切に扱っても、読んでるうちに凄い勢い傷んでいきます(;_;) ちなみに本文ページ数1311ページ、厚さ5cm、分冊版だと3巻本です。 で、お話は色々な点から、正直あまり感心しないのですが、それにも関わらず、このページ数を一気に読ませるリーダビリティには感服しますね。大した内容でもないし、ネタも割れ気味なのに、何故なんだろうとほんとに不思議(@_@;) しかし、私はこのシリーズは特にこれといったキャラ萌え( 笑 ) もなく、読み続けてきているのですが、ほとんどの登場人物がかなりキャラ変わってきてますよねぇ。これってどうなんだろう…? もちろん、山下さん( 現在の役職忘れた^^; )みたいにシリーズ中の事件によって否応なしに変わったとかいうのは別だし、主要人物たちの変化も自然な流れによるものであれば別にいいと思うんですけど、どうも違和感がある変化が多いんですよね。 でも、このシリーズの読者って確実に大半がキャラに思い入れがある人だと思うので、その方々が不満がないのであれば、これらの変化は多分自然なものなのでしょうね。もしくは変化したと感じること自体が間違ってるかだな。私の感じでは、キャラだけでなく全体のトーンとか設定( というとちょっと違うんだけど、適切な言葉が思い当たりません… )も変わってきてると思うんですけどね。もはや妖怪ほとんど関係ないよねとか思っちゃうんですけどね。 あ、でも、憑物落としにはさほど力は感じられなかったけど、今回人が変わったようであった関口くんの語る、自らと家族や友人などの自分に近しい人々の関係の定義はよかったですね。 タイプが違う人には全くピンとこないかもしれませんが、私は鞄の比喩による説明も凄く響きましたし、肉親への感情のくだりは痛いくらいでした。残念ながら長過ぎて引用はできませんけども^^;  人と人との関りというのは何であれ重いのですよね。ある程度以上の深さの感情はある場合はもちろん、利害関係がある場合もそうだし。でも、誰にも関わらずに生きていくことはできないのですよねぇ。やれやれ。