『 ハンティング・パーティ -CIAの陰謀- 』 ( 2007・米 )

◆  ( 2007年・アメリカ )

 監督:リチャード・シェパード

 出演:リチャード・ギアテレンス・ハワードジェシー・アイゼンバーグ、リュボミール・ケレケス、マーク・イヴァニール 他

 評価…★★★★☆

<あらすじ>

有能な戦場レポーターで、数々の実績と華々しい経歴を持つサイモンは、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争現場からの生中継中に放送禁止用語を交えての相当な暴言を吐き、業界から干されてしまう。サイモンとコンビを組んで数々のレポートをものにしてきたカメラマンのダックは、相棒を失ったものの、その経歴を評価されて、ニューヨークでいいポジションを提供される。そして、ふたりは連絡を取ることもなく、それぞれの世界で過ごしながら時は過ぎていき、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争も終結した。

そして、紛争終結から5年後、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエヴォで記念式典が開催されることになった。その模様を伝える有名テレビ局のアンカーマン・フランクリン・ハリスに同伴し、ダックは懐かしい土地へと降り立った。戦場カメラマンとして現場を巡ってきた日々は遠い昔のことのように感じられる今のダックは、過去と現在の自分やサイモンのこと、そして、当時目にしてきた悲惨なサラエヴォでの状況などに思いを巡らせずにはいられなかった。と、複雑な気分でいるダックの前に思いがけない人物が現れる。サイモンだった。なんと彼はまだフリーで戦場レポーターをやっており、自分で撮ったちょっとしたフィルムを世界の様々な国に売るなどして、何とか糊口をしのいでいたのだ。

サイモンがすっかりおちぶれたことに驚き、それでも、まだ戦場レポートをしていることにも驚いているダックに、サイモンは更なる驚きをもたらす。 「 フォックスのインタビューを取るからカメラマンになってくれ 」 というのだ。 フォックスとはセルビア側の指導者で、大量虐殺を指示したなどの罪で戦争犯罪人として国際的に指名手配されているが、国連もCIAもいまだに消息さえつかめずにいるという人物だ。それが実現したらとんでもないスクープだ。にわかには信じられない話だが、かつてのサイモンを知るダックにはもしやという思いもある。眠っていたジャーナリスト魂が刺激されてしまったダックは悩みながらも、結局同行を承諾してしまうのだが、実はサイモンはとんでもない計画を立てていた。


※以下ネタバレ有り※

重いテーマを秘めていながら、軽く楽しく見られる面白い作品です。まぁ、少々軽過ぎる感が無きにしもあらずですが、アメリカ映画でメジャー作品だし仕方ないでしょうねぇ。

リチャード・ギアが最後まで現場主義の凄腕ジャーナリストには見えない( 私個人の印象かもしれませんが、俳優としてのセレブ感が強過ぎるのか、今までの役のイメージなのか、汚く粗暴に振舞っても、お尻を丸出しにしても(笑)上品で知的にしか見えない )のですが、それも全然気になりません。

ふだんはこういうジャンルの映画を見ない私を見る気にさせて、かつ失望させなかったというのは結構凄いことかと^^; 

エンディングでどれが事実でどれがフィクションと説明してくれるところはよかったですね。まぁ、フォックスが捕まってる時点で、ストーリーはほぼフィクションなんだというのはわかるのだけど( ちなみに実際のフォックスは映画公開の翌年に捕まったそうです。実はこの映画が影響してたりして?(@_@;) なんて思いたくなりますね^^; )、サイモンたちの設定が全くフィクションだったというのはかなりがっかりでした(T_T) 

あ、でも、不必要な女性を登場させたり、さらにその女性と恋愛的なことをさせたりとかいうのをしてないところは、私としてはとても高評価です^^ 実際の協力者は男性だったのを女性に変更したというのはありましたが、これによって話が面白くなってたから全然OK^^

うーん、でも、やっぱり、もう少し、戦争とか民族紛争とか国際政治とか、アメリカの身勝手さとかについて掘り下げて欲しい気がするなぁ…。まぁ、それをやるとこんな作品に仕上げるのは難しいか。ここで描かれているわずかな情報から、そういうのを読み取って問題視する人はしてくれればいいし、単純に娯楽映画として楽しむ人はそれでもいいって感じなのかなぁ。

元になっているボスニア・ヘルツェゴビナ紛争がつい最近( …は言い過ぎ?でも、同時代の出来事ですものね )の話で、しかも、物凄く重い話なので、色々と評価が難しいんですよね…。全く取り上げないよりは、こういう形であっても世間に何かを訴えて欲しいという気もするし、こんな軽い扱いはしないでほしいという気もするし。うーむ。

あと、もっとジャーナリスト魂とかいう話なのかと思ったら、そうでもなかったのもちょっとがっかりです。極端に言ってしまえば、全ての動機はサイモンの私怨( = ボシュニャク人( 多分 )である恋人が陵辱された虐殺された。それも、おそらくサイモンの子をみごもっている状態で )なのですよね。生中継中に錯乱に近い状態で暴言を吐いたのもこの事件が理由だし。

いや、もちろん、それが動機でも全然悪くはないんだけど、それを、もう少しこう、社会的な話に結びつけるとか、そういうところが欲しかったように思います。最終的にも全然事実を報道したりしないまま終わるしね。どうせフィクションなんだから、もう少し景気よくやってくれても良かったのではなかろうか。

( 4月鑑賞分 )