『 ぼくだけの☆アイドル 』 新堂 冬樹

◆ ぼくだけの☆アイドル  新堂 冬樹 ( 光文社文庫 ) \520  評価…★★☆☆☆ <作品紹介> しがない昆虫ショップの店員、あきおは27歳。かなり夢見がちな青年だ。脂肪たっぷりの体、イケてないファッション、当然彼女なし…なのに、自己評価はどこまでも高いのだった。アイドルのみーちゅんとの相思相愛を妄想しながら、ムシたちのケース清掃に精を出す毎日。そんな彼のしょーもない日常に訪れた、絶好のチャンスと最悪のピンチとは? 異色青春小説。 ( 文庫裏表紙紹介文 )
白でも黒でも灰色でもない何かよくわかんない新堂冬樹です(*_*)  この表紙と帯( いずれも写真入り、しかも帯はほしのあき )はムダな金を使っているのであろうことを含めてどうよと思ったけど、まぁ、そんなに遠くはない内容でしたね。 ほしのあきの 「 そんな主人公が、最後には愛おしくなるはず! 」 という帯のコメントには、「 本気か? 」 と言いたい感じはありますけど、ふだんの新堂作品の主人公よりは共感できるのは事実かな^^; 主人公はオタク系デブで妄想癖ありのかなりな自己中…と新堂世界ではおなじみな要素満載なのですが、そのいずれも薄味なんですよね。いや、妄想癖とかはかなりヤバめで引くくらいなんですけど、いつもの主人公みたいに不快な感じではないのです。 脇役も結構濃いし、細かい設定や描写はムダなくらいあって、その辺を掘り下げたら黒新堂になりそうなんだけど、しないんですね。一部には何故これ出してきたの?って思うものもあります。場面としては面白いけど物語としてこれ必要?みたいなのが結構あるんですよね。まぁ、それはそれで悪くないんだけど、軽い読み物にするにはそういう要素が多過ぎて、うまくこなれてない感じがします。さらに言えば、こういう軽い話なのに、ラストがきっちりオチてないのが私は納得できない。まぁ、青春小説と思えばこのラストでいいのかもしれないけどね。 そんなわけで評価は低めにしてますが、面白いことは面白いです。あ、軽くても新堂冬樹なので、ダメな人は全ダメかもしれませんが^^; ※以下ネタバレ有り※ で、まぁ、これを言ったらヤボなのかもしれないけど、前半であれほどまでにイッちゃってる感じのある、いや、半ば過ぎてもまだかなりヤバ気な感じのあきおが、桜子と上手くいくわけねーじゃん、ってか、そもそも惚れられないだろ、性格がいいわけでも、特技があるわけでもない、ただのキョドり気味のキモ系デブだよ?と思わずにはいられないのですよなぁ…。 ずっと登校拒否で、初めてまともにしゃべれたのがあきおだったんだ…とか何とかの理由付けがされてるならともかく、そういうの全くないし、桜子そういうタイプではないし。まぁ、夢のあるいい話ではあるけど、その割には結ばれてハッピーエンドともならないしなぁ。 一時は脳内恋人にもなっていたアイドルが実は9歳もサバを読んでた( 29歳 → 20歳 )上に、15歳の時に産んだ隠し子がいて、その隠し子が実は桜子で、初めての恋人だと思った桜子は14歳で、アイドルの夫であり桜子の父親である資産家だという男は、実はあきおのバイト先の店長で…って、余りにも荒唐無稽でご都合主義過ぎで笑うしかないし、突っ込む気にもならないですが、唯一新堂冬樹らしいのは、主人公であるあきおは桜子の両親からは相当に嫌われているという点ですね。それも、誤解とかじゃなくてフォローのしようがないくらい(笑) そうじゃなかったら逆ハーレークインロマンスみたいな素敵な夢物語なのにねぇ^^;  あ、でも、あきおくんはアイドルオタクだけどロリコンではないので、14歳の美少女に惚れられるというおそらくオタク男性の大半にとって夢のような状況は別に嬉しくなくて、むしろショックだったらしいですけど^^; この点と、アイドルオタクといってもハマったのは後にも先にもみーちゅんひとりっていうところに私は非常に好感を持ちましたね。そういう意味では、あきおは見所がある^^  願わくば、ちゃんと就職して、桜子との愛を貫いて欲しいものです。でも、その場合、桜子の父のように14歳の時に手を出しちゃ絶対ダメだよ。せめて、16歳になって結婚するまでガマンしないとね。何しろ夢物語なんだから、そこはキレイにしないと^^; ( 6月末読了分 )