『 八朔の雪―みをつくし料理帖 』 高田 郁

◆ 八朔の雪―みをつくし料理帖  高田 郁 (ハルキ文庫 時代小説文庫) \580  評価…★★★☆☆ <作品紹介> 神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「 つる家 」。 店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。大阪と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、名料理屋「 登龍楼 」が非道な妨害をしかけてきたが・・・・・・。 料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!( 文庫裏表紙紹介文 )
ちょっと前から私の中で開催されている、新しい時代小説作家発掘フェアの中で出会った一冊です。江戸に出てきた関西人、女性料理人、作者も女性…と私が警戒する要素満載だったのですが、新聞広告で見た内容( ちょっと目新しい設定 )とやはり食べ物話という点に惹かれ、落胆覚悟で購入してみたら、意外にもなかなかの当たりでした^^ 江戸の中にいる関西人という設定を一粒で二度美味しいと思うか、うまく馴染んでないと思うかは判断の分かれるところではありますが、私の場合は何とか許容範囲かなといったところでした。江戸の味と上方の味の違い( 味付けや素材、調理法も含めて )が全話を通してのちょっとした軸みたいになっているのですが、この点も面白いといえば面白いけど純粋に食べ物話を楽しむにはちょっと微妙感があります。作中人物たちにとっては驚きでも読者の側としては既知の事柄がほとんどですしね。 料理の話がメインだからか、人物の設定がはっきりしなかったり不自然だったりなのもちょっと気になるところですが、キャラクターとしてはそれぞれに魅力的で面白いから、まぁいいかなと。しかし、競合する有名料理屋の遣り口がいくら何でも汚過ぎるのはちょっと気になるところですね。ほとんどヤクザですよ(-"-;) 料理人にしても商売人しても、あの程度の地位に上り詰めた人はあんなことはしないと思うんだけどなぁ。ちょっとした妨害くらいするかもしれないけど、本作における妨害は荒っぽ過ぎる。 正直に言えば、私の好みからすると主要人物はいずれも余り魅力的じゃないのですが、好感は持てますし一般的には魅力的だと思います。本作中で唯一私の好みなのは旭日昇天太夫ですね。本人登場してないけど^^ あ、太夫の使いの又次も結構好き^^; しかし、みんな設定に謎とドラマが多過ぎるよなぁ。 澪の過去なんか必要以上に重いと思うのですが…。  でも、この作品、後に続きそうな感じなんですよね。これで終わりにするのではジャンプの打ち切り作品並みだと思う。 内容紹介とかで勝手に最終話での大団円を予想して読んでたから不満が残ったけど、これから続編が出るのであれば文句はないかなぁ。 いい話だし、確かに最後はちょっと目が潤みましたけど、帯の細谷正充氏や角川春樹氏が激賞するほどでもないと思いました。というか、そんな感動ものだったら私はむしろ面白くないと思ったことでしょう^^; 何か全体的に褒めてんだか貶してんだかわかんない感じの文章になってますが、私としてはかなりいい作家さんなのではないかと思っています。 近日中に既刊文庫を読みたいと思います。