『 大名廃絶録 』 南條 範夫

◆ 大名廃絶録  南條 範夫  ( 文春文庫 ) \670  評価…★★★★☆       <作品紹介> 武家にとって御家断絶以上の悲劇はあるだろうか。慶長5年の関ヶ原役以後、徳川幕府によって除封削封された大名家の数は240。理由は世嗣断絶、幕法違反、乱心などさまざまだが、幕府は狙ったら必ず何かを見つけ出した。本書は廃絶の憂目にあった大名家の中から福島正則本多正純など12の悲史を描く名著。  (文庫裏表紙紹介文)
これは、お好きな人にはたまらないけど興味のない人には全く面白くない本かなぁ^^;  私は大変面白く読みましたが、情報量が多いのと、その情報に関係してあれこれ考えたり思い出したりしながら読むので、驚くほど読むのに時間がかかりましたねぇ。まぁ、そういうのもまた楽しいのですが。でも、異常に時間がかかったのはアタマが悪くなったせいもあるかも…(T_T) 残酷時代小説の書き手として有名な著者ですが、本書は純然たるノンフィクションで、作家が書いたとは思えないほど事実のみで記述されています。しかし、主観や物語的脚色や空想と言ったものが全く排除されているのに、物語的な面白さがあります。これは題材の面白さと構成の妙によるものですかね。 取り上げられている大名家は外様から親藩まであり、石高もまちまち、理由も様々で、どうしてこんなことになっちゃったのかなぁと首をひねるものもあれば、こんなことじゃムリもないと思うものもありますが、全体として、名家だったり、有名な人物が出た家だったりで、こんなことで断絶させたらダメだろうというのが多いですね。著者も作中で書いてますが、ほんとに何故どの家も抵抗しなかったのか不思議です。 本書については下手に内容に触れるより、取り上げられている大名を列記した方がよろしいかと思うので、以下に全てあげておきます。( 掲載順 ) 里見安房守忠義、 松平上総介忠輝、 福島左衛門大夫正則、 最上源五郎義俊、 本多上野介正純、 松平三河守忠直、加藤肥後守忠広、 駿河大納言忠長、 生駒壱岐守高俊、 加藤式部少輔明成、 堀田上野介正信、 松平中将光長。 このそれぞれの大名家の話も面白いですが、冒頭の 「 徳川幕府の大名廃絶録 」 がまたいいです。資料的にも使えるし、この一章のためだけにでも本書を購入する価値があるかも。