『 半魔 』 黒武 洋

◆ 半魔   ( 徳間文庫 ) \920  評価…★★☆☆☆       <あらすじ> 真面目で優等生タイプの女子高生陽子は、17歳の誕生日の日に自分でも説明できないような衝動に駆られて、生まれて初めて学校をサボってしまった。しかし、特にしたいことがあるわけでもなく、憂鬱な気持ちで、ただ街をさまよっていた。そんな時に自殺しようとしている女子高生・寛美を見かけ、ちょっとした行きがかりから彼女を命がけで助けることになる。その際に二人は、それぞれが他人にはない能力を持っていることを知る。実は寛美の自殺の原因のひとつはその能力だったのだ。そして、陽子に寛美を助けるように仕向けた少女・理砂もどうやら、何らかの力を持っているらしい。偶然とは思えない状況に驚きつつ、仲間に出会えた喜びに浸る陽子のもとに母からのメールが入る。文面は一言。 「 にげて 」。 状況は理解できないが、何とも言えない胸騒ぎを感じた陽子は寛美とともに自宅へ急ぐ。すると、そこは火の海だった。そして、何とか母を助けようと室内に入った陽子の前に現れたのは、母の姿をした別の何者かだった。そいつは陽子に、母と声と口調で嬉しげに語りかけてきた。「 17歳の誕生日おめでとう。あなたを迎えにきたわ。あなたには魔の血が入っているの 」と。 その場から何とか逃げ延びた陽子だったが、母は焼死、自宅も家財も消失。呆然とする陽子に救いの手を差し伸べてくれたのは理砂だった。やはり、彼女も仲間なのだ。自分たちの周りで何かが起こっていると気付き始めた陽子ら3人の周りで、今度は次々と血生臭い事件が起こり始める。 私たちの持つ力は何なのか? 魔の血とは一体? 周囲で起こっていることや、自分たちの内部的な変化、他の能力をもつ人たちからの助言などから、陽子たちは状況を把握しようとするが、全ては信じられないようなことばかりだ。 そして、今度は理砂が17歳の誕生日を迎えるにおよび、徐々に真実が明らかになってくる。 彼女たちを求める 「 魔 」とは……。
※以下ネタバレ有り※ 何だかんだでデビュー作 『 そして粛清の扉を 』から、続く『 パンドラの火花 』、そして本書と著者の作品を意外と読んでるのですが、何だかどんどん完成度が低くなってるように思えるのは何故でしょう? ムリのある設定や説明不足などによる荒唐無稽な感じはいずれにも共通するのですが、今回のはちょっとひどいなぁ…。 いや、面白いのは面白いんですよ。どの作品も。荒唐無稽なところは魅力でもあるし。 でも、一応大人向けで、それなりにテーマがあるように作られていた前2作と違って、本作はちょっと安過ぎるんですよねぇ。主要キャラが女子高生だからというわけではなく、設定も内容も何か古いラノベみたいなのです。女子高生の人物造型がどうしようもなく古いのは、まぁご愛嬌としても ( 本作の場合、別にリアルな女子高生像は求められてないですからね )、話が浅過ぎるのですよねぇ。ただ自分の書きたいとこを書いただけで、物語は収束されず、伏線張りっぱなしでエピソードは投げっぱなしって感じ。まぁ、そういう話として読めばいいんでしょうけどね。部分的に面白いところはあるし、子供向けのSF系エンタメと思って読めば、なかなか楽しいことは楽しいです。女子高生だらけだし、超能力 ( 一部霊能力 )対決シーンはかなり派手だし、3人それぞれの周囲で起こる連続殺人事件エピソードもなかなか悪趣味で良いです。絵の上手な人がマンガ化したらかなり面白そう。「 魔 = 神 」みたいな発想は、私なんかからすると結構ベタなんですが、こういうのを読み慣れてない人やお子様には新鮮でいいかもですしね。こういうところから既成概念を打ち破るのはいいことです。 しかし、どんなに暖かい目で見ても、寛実の高校での過去の生霊によるカップル殺人の話の決着だけは納得できんなぁ(-"-;) 特に何の事情もない女子高生の片思いの記憶があんな大惨事を引き起こして、あんなあっさり解決って。しかも、その片思いの対象だった神崎先生には何の物語もないし。同級生にそんなに惚れ込まれるような少年が何故あんなにまで嫌なオヤジになったのか、そして寛美の能力に気付いてるようなのは何故かとか、そういう謎解きを誰もが期待していたと思うんですけど(T_T)