『 ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習 』 (2006・米)

◆ ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習 ( 2006年・アメリカ )

 監督:ラリー・チャールズ

 出演:サシャ・バロン・コーエン、ケン・デヴィティアン 他

評価…★★☆☆☆

<作品紹介>

カザフスタン国営テレビのリポーター・ボラットは情報省の指示により、アメリカ文化を学ぶためにプロデューサーのアザマートと共にニューヨークへとやってきた。

学ぶべきことはユーモアのセンス、フェミニズム、礼儀作法など様々。カザフスタン以外のことを何も知らないボラットは、国で手配していたところや飛び込みのところ含めて色んなところへ顔を出しては騒動を巻き起こす。

そんな中、ボラットは初日にホテルのテレビで偶然目にしたC.Jという女性に一目惚れし、この今まで見たこともない、祖国には存在し得ない美しい女と何とかお近づきになれないかと煩悶していた。

取材を続けるうちに、彼女が実はパメラという女優でカリフォルニアに住んでいることが判明し、続いて祖国にいるボラットの妻が死亡したという報せが入る。これはもうパメラと結婚するしかないと躍り上がったボラットは、アザマートを強引に説き伏せて、取材コースを変更しカリフォルニアへと向かうことにする。

そのための車を手に入れる交渉や、旅の途上で参加や取材した様々なイベントの場などで、更なる珍騒動を巻き起こしながら、苦難の果てにボラットはパメラの前に立つことに成功するが…。

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ドキュメンタリーの体裁で作ったブラックで下品なコメディ。

毀誉褒貶の差は激しいが、世界24ヵ国以上で初登場第1位、アカデミー賞脚色賞ノミネート、ゴールデングローブ賞主演男優賞受賞という実績を持つ。


※以下ネタバレ有り※

いやー、これは最低ですね。見てる時も見終わってからも感想はそれに尽きます。私はこういうのはダメですねぇ。

私はお笑いもコメディも好きなのですが、このテのおふざけ映画は基本的に嫌いなのですよね。なので、本作を借りる時にも結構悩んだのですが、「 バカには理解不能なバカ 」 という煽り文句と先に紹介した輝かしい実績を見て、下品なのはカモフラージュで高度な笑いがあるんだろうか?と思ったのと、アメリカ人がカザフスタンという設定を使うからにはそれなりの覚悟があるはずだという思いとそれに対する興味で、結局借りてしまったのです。が、全然ダメでしたねぇ。予想は悉く外れました。

部分的に面白いところがないわけじゃないし、これがある種の人々に受けるのもわかるんだけど、私は嫌いです。 まず、何のためにカザフスタン国営テレビのドキュメンタリーって体裁をとったのか全然理解できない。対極的な立場からの風刺や分析みたいなのがあるんだろうと期待してたのに、そういのでは全くないんですよ。それこそバカのふりして、アメリカの文化や思想などの妙なところを明るみに出してるところがあったりはするんですが、あれではアメリカ人は皮肉られてるとも気付かないんじゃないかしら? この作品は単にカザフスタンを貶めているようにしか見えないんですけどね。ちょっと前まで、こんな感じでバカにされることの多かった日本人としては極めて不快に感じました。それとボラットの巻き起こす珍騒動ってのが、文化の違いによるもののようには到底見えないのも難点。ってか、カザフスタンの文化はあんなじゃねぇだろう…。

男女差別、同性愛差別、人種差別、障害者差別…と言ったところは、特に目新しい感じでもなく、さほど不快でもなく割とわかりやすくギャグとして成立してるから、否定はしないけど、私はやっぱり好きじゃないなぁ。そのまんま過ぎてブラックユーモアの域には達してないと思います。これは全体について言えることですけど。

そもそも、この作品のギャグのほとんどは下ネタなんですよね。それも、ギャグと言えないくらいストレートなヤツ。 やたらとセックスの話をしたり、性器そのものを出したり。尾籠な方も同程度のストレートさ。前者はまだいいけど、後者はほんと最悪でした。私は心に相当に程度の悪いエロオヤジが住んでますが、こういう下ネタは大っ嫌いです。 

あ、でも、私が唯一面白かったというか感心したのもシーンとしては下ネタかな…。まぁ、私は下ネタとして受け止めたわけじゃないんだけど、いずれにしても相当にひどいシーンではありますね。紹介しましょう^^;

ホテルのベッドでアザマートが、パメラのグラビアを見ながら全裸で自慰をしているのをボラットが発見してしまい、怒り狂って彼に飛びかかるのですね。で、全裸の中年男ふたりがベッド上でくんずほぐれつ。しかも、何でかしらないけど互いの上下が逆の体勢で重なり合って、お互いの股間に顔を押し付けあうような攻撃がしばし続く。これはどう見ても…っていう悪意に満ちた映像で、生理的に受け付けない人も多いだろうって感じのシーンなんですが、アザマートが相当なデブで色黒で毛深いので、そんなに生々しくなく、何かこの世のものとは思えない、本来ならば見ることのできないものを見てる感じがして面白かったのでした。しかも、かなり長い時間やってるので、何だか現実感覚を喪失してくる感じすらしましたね。ああ、人によっては物凄い生々しい、萌え映像だったりもするのかもしれませんが…^^; 

その後、全裸でホテル内を走り回ってというお決まりのドダバタは、ドキュメンタリーという体裁としてはちょっとどうかなと思ったけど、エレベーター内では全裸ながらも神妙に見えるくらいにおとなしくしてて、乗り合わせた他の客達は異様なふたりを見て見ぬふりをしているシーンが良かったですね。ここだけは正統派コメディって感じ。

あと、あのカザフスタン国歌が不覚にもちょっと面白かったです。「 カザフスタン カリウム 輸出で世界一 」という歌詞がちょっとツボで。カリウムときたか!と^^; 国歌って結構、自国の富や産物を誇るような歌詞だったりするから意外にリアルな感じだし。

うーん、この映画を作ったのが本当にカザフスタンならば、実に素晴らしい作品と言ってもいいんだけどなぁ(笑)

そんなこんなで、「 バカには理解不能なバカ 」 というのは全くあたらず、むしろ単純バカとバカじゃないふりをしたいバカ向けのバカ映画というのが正しいんじゃないかなぁと思ったことでありました。 バカにも色々あるのですよね。 この映画が苦手な私の所属するバカの種類は秘密 (^_^;)b

あ、もちろんバカじゃない人でこういうのが好きな方もいらっしゃるでしょうけど、まぁ、趣味の問題ですからね、ええ。