『 メキシコ人はなぜハゲないし、死なないのか 』 明川 哲也

◆ メキシコ人はなぜハゲないし、死なないのか 明川 哲也 (文春文庫) \1,000 評価…★★★☆☆ <あらすじ> 人生に行き詰ってしまった料理人・タカハシは、自殺の寸前、不思議なネズミたちに命を救われた。ネズミたちは世界で最も低い自殺率のメキシコには、人を死に誘う「憂鬱の砂嵐」を追い払う四つの宝があるという。宝探しの旅に出たタカハシがメキシコで知る驚愕の真実とは? 色彩と味覚にあふれたスーパー・ファンタジー小説  ( 文庫裏表紙紹介文 ) この題名でファンタジーって、ちょっとあり得ないですよね。でも、ほんとにしっかりファンタジーです^^; ちなみに題名はちゃんと根拠のある話で、2007年集計のWHOの調査によると日本の自殺率24%に対してメキシコの自殺率は4%なんだそうです ( ちなみに日本の自殺率は世界トップクラス(T_T) 。 ハゲについては明確なデータは提示されていませんが、ストレス性のハゲについての説明などあります。
※以下ネタバレ有り※ ほとんどの人がそうなんじゃないかと思うのですが、私は本書をてっきりノンフィクションだと思って手にとりました(笑)  興味深い題名だけど、ちょっと厚過ぎる (本文617P )なぁ…。 ( 裏返して定価確認 ) 価格も4ケタかぁ、残念だけど見送りかな。 ( 紹介文確認 ) ん? これ、小説なの? 何、しかもファンタジーだぁ!? ってんで、驚愕して、内容をチラ見して、著者略歴を見たら、何と、かつて 「 叫ぶ詩人 」 として一世を風靡した( 誇大表現^^; ) ドリアン助川氏と同一人物だというではないですか! こりゃ買いだ、外れても悔いはないよ、ああ買うとも。 …と勢い込んで買ったわけですが、うーん、正直微妙でした。ストーリー自体が面白くないわけじゃないし、評価すべきところも多々あるけど、なじめないところも結構あるんですよね。 てゆーか、そもそも長過ぎはしませんかね? で、こんだけ大部の作品読ませといて、最後は夢オチもどきってのはどんなもんだろうか? (-"-;) まぁ、私の場合は、とにかく本作のファンタジー部分の多くを担っているネズミキャラたちがどうも好きになれなかったのでダメだったんでしょうねぇ。マルセロはまだかわいいと思える時もあったけど、説教ハゲオヤジネズミのボラボラがどうにもダメで(-"-;) キャラも好きじゃないけど、何よりも独特の口調がガマンならない。本作は、ボラボラ以外にもポーリョとか妙なしゃべり方をするキャラクターを出してくる傾向があるんだけど、私はそれらがどうにもカンに触ってダメでしたね。何のためにこんな設定つけるのかわかんない。こういうのをユーモアとか思っているのか? だとしたら、ちょっと相容れない感覚だなぁ。 あ、だから、私とは逆にこういうのを楽しく受け入れられる人には本作は凄く面白いのかもしれません。まぁ、こういうのは好みの問題なんでね。 …と、つい、また貶しから入ってしまいましたが、料理と色彩についての描写の部分は良かったですねぇ。特に最初の方で、ダストシュートの壁一面に生えてゴミを喰らう頭と腕だけの中年薄毛日本人男性の集団に請われて、美味しい魚料理と日本酒 ( ちなみにカンパチと吟醸酒オニカサゴとそのヒレ酒 ) の話をするシーンは凄く良かった! 心から呑みに行きたくなったもん(笑) 飲食欲をそそるという点だけでなく、奇想という点からもこのシーンはよかったですね。 その後のメキシコ料理のくだりは前述のシーンほどダイレクトに食欲を刺激はしてこないのですが、色彩と生命力に溢れた描写が良いですね。 原因不明の異変により全ての色彩を失ってモノトーンになった村が、トマトの原種である赤い果実によって、次第に色を取り戻し、それにつれて活気を取り戻してくるシーンは映像で見たい感じです。食物に関するウンチク的な部分が物語的にはちょっと微妙感あるけど、個人的には賛同できる話 ( 色にこだわって料理を作る質で、赤・黄・緑がそろってたりすると物凄く達成感を感じるヒトなのです^^; ) だったので良しとしておきます。 ( 6月読了分 )