『 卵のふわふわ 』 宇江佐 真理

卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし  宇江佐 真理 (講談社文庫) ¥560

評価…★☆☆☆☆

<作品紹介>

のぶちゃん、何かうまいもん作っておくれよ―。夫との心のすれ違いに悩むのぶをいつも扶けてくれるのは、喰い道楽で心優しい舅、忠右衛門だった。はかない「 淡雪豆腐 」、蓋を開けりゃ、埒もないことの方が多い「 黄身返し卵 」。 忠右衛門の「 喰い物覚え帖 」は、江戸を彩る食べ物と、温かい人の心を映し出す。  (文庫裏表紙紹介文)

※ 今回は自分の大好きな作家さんが、自分が読む限りひどいとしか思えない作品を書いたということで、辛い評価になっております。


※※※ 以下、かなり暴言を吐いている可能性がありますので、予めご了承下さいm(_ _)m この作品が好きだとかいう人は、以下は決して読まないで下さい。

また、変な先入観を与える恐れがあるので、未読の方もできればお読みにならないで下さいませ m(_ _)m ※※※

「 何だこりゃ!? 宇江佐さん、もうボケたのか!?」 ってのが、一読後の正直な感想でした。いや、読んでる時からそれに近いことは思っていたのですが、てゆーか、読み始めてすぐに思い始めていたのですが。ほんとにどうしちゃったんですか、宇江佐さん(/_;)

このブログにも既に何度も、「 最近の宇江佐作品はどうも… 」ってなことを書いておりますように、最近ほんとに妙なところのある作品が多かったんですよね。だもんで、本書も発売後すぐに書店で見つけて、「 あ、宇江佐さんだ。しかも食べ物話! 」と喜んで購入したものの、どうも嫌な予感がして表紙を開けずにいたのですね。裏表紙紹介文に嫌な気配を感じていたというか。( 「 のぶちゃん 」はねぇだろう、とかね…) 手にとってはやめ、というのを何度か繰り返して、気付けば購入以来なんと7ヶ月もの月日がたっておりました( 07年7月発売 )。

未読分として積んだままの本書を見る度に暗い気分になっていたのですが、先般の伊三次シリーズ文庫版最新作がまずまずの出来だったので、それで勇気を得て、とうとう読み始めてしまったのですよ。もう大失敗(T_T) でも、いつかは読まねばならなかったのだから(そうか?)、勢いで読んでよかったのかなぁ…。

…と、長々と私的な前振りをしましたが、これから思い切って貶したいと思います。もともと取り留めない読書記録ですが、今回はほんとに体裁無視で思いつくまま、がんがん貶します(>_<)

もう何がダメって全てがダメ! 登場人物もストーリーも出てくる食べ物も、時代小説的としても描写も、ほんとどこから俎上にあげたもんか悩むくらいダメなところばかりです。ほんとに何もかもがダメです! 今までダメだった作品は、受け入れられないところはありながらも全体としては何とか…ってレベルだったんですが、これはひど過ぎる。

ここまで自分勝手で気持ち悪い連中ばかりがメインキャラクターで、「 温かい人の心 」とか感じられるかよ。強いて言うなら、これは真夏の満員電車で他人のむっと熱を持った生身に、自分の肌がうっかり触れちゃったような薄気味悪い感じだよ。

そもそも自分自身にろくな知識があるわけじゃないし、時代考証とか体裁とか余り気にしない方なんですが ( 何しろ山田風太郎作品大好きですからね )、この舅の言葉遣いは余りにもひどくないですか? てゆーか、とにかくこのジジイが気持ち悪くて仕方が無いですね。そして、コイツの息子がまた別の意味で気持ち悪い最低な男だ。ちょっと見てくれがいいのを鼻にかけた女々しいDV野郎で、しかも女を見た目でしか判断してない上に、それを平気で口に出すという。ああ、もう書いてて腹立ってきた。これ以上悪口を書いても仕方ないから、やめよう。……と思ったけど、ヒロインについて触れないわけにはいかないので、続けます。

おのぶはただの思い込みの激しい自己中のバカ女です。言っちゃなんだが、宇江佐作品にはこのタイプのヒロインがとても多いです。それが鼻につくかつかないかという違いはありますが。あと、この時代にこんな偏食って有り得なくない?家が物凄く裕福で甘やかしてるとかならともかく、それほどの家でもないんだし、いずれにしても、武家なら矯正されるはずだ。そして、こんな偏食女が美味いもの作れるわけがないだろうがよ。料理は舌だよ。

姑はこの中では唯一まともで、かなりいい人と言ってもいいんだけど、設定が奇妙であるために妙な感じになってしまっています。

そう、この舅姑夫婦の話も何か妙なんですよね。引き手茶屋の娘だったというのを嫁に隠すこともないでしょう。周囲が知ってて陰口言うくらいなんだから。しかも、やや名誉毀損気味の悪口言われてるんだから、そこで黙ってないで言えばいいじゃない。この、陰口言う人達もどうかと思うけど、まぁ、そういうのはよくある話だから不問。

で、舅野郎はそういう経緯があって結婚したにも関わらず、「 わしと婆さんも合わん 」発言を筆頭とする、嫁の機嫌を取ろうとして女房を貶す的な発言連発しやがるし、ほんとムカつくし、気持ちが悪い。

ああ、気持ちが悪いと言えば、夫婦生活だの色事だのに関する部分も妙に生々しい、というか生臭くて凄い嫌な感じ。身分が違うんだから引き合いに出すのは間違ってるとは思うけど、伊三次シリーズであんなに粋な色事を描いたのと同一人物の筆になるとは、とても思えないですね。

あ、ヒロインだけでやめようって言って、また続けてしまった…。B級以下の下らない映画に対する悪口とかとは訳が違って、これは純粋に貶しているので書いてて気分が悪いんですよね。しかも、元は好きだった人をこんなに口を極めて罵らずにはいられないなんて、ほんとに辛く悲しいことです(T_T)

しかし、この際もう少し続けます(>_<)

そんなわけで、気持ち悪いし性格も悪くて、全く共感のできない主要登場人物たちが、わけのわからない行動原理でごたごたする話なので、読んでて全く面白くありません。

「 夫との心のすれ違い 」も何も、この夫婦はそもそも全く心が通じてないし、最後も別に通じたわけではないと思うし。全く魅力のないおのぶに周囲がやたらと惹きつけられるのも不審だし。その件に関して言えば、はとこの良助にどうこうのってくだりも非常に不快。急に仕掛けてくるのは確かに良くないけど、ああいう言われようでは良助がかわいそう過ぎ。冴えない男じゃなかったら、その気になったんじゃねぇのとか言いたくなってしまう。というか、このエピソード自体が不快だわ。女が婚家を出ての不都合って言って、いきなりこんなネタですか?もっと生きていく上での辛さとか、世の中の厳しさみたいなのではダメなんですか?

『 涼味 心太 』 のくっだらない謎解きにも呆れ返ったし、ほんっとにひどい作品でした。

もう宇江佐さんの新刊出ても読む気がしない(-"-;) ほんとに大好きだったのになぁ…。悲しい…(T_T)

(3月読了分)