『乳房とサルトル 関係者以外立ち読み禁止』 鹿島 茂

◆ 乳房とサルトル 関係者以外立ち読み禁止  鹿島 茂 (光文社 知恵の森文庫) ¥650  評価…★★★★★ <作品紹介> 聖母マリア」画像の胸の大きさの変化でわかる「乳房」の社会史、中国宦官の愛憎渦巻く知られざる宮廷秘話、サルトル著『嘔吐』の主人公がマロニエの木の根っこを見て嘔吐した気持ちがわかるという昨今の若者の心情とは? 過去を振り返り、今を知る。沸き立つ疑問に様々な文献を繙いていく究極の蘊蓄読本。 (文庫裏表紙紹介文より) 専門分野であるフランスの古今の話から周辺各国の話を主軸に、近現代日本はもちろん、近代中国やインドにまで話は及びます。内容も卑近なものから典雅なものまで多岐にわたり、とても説明しつくせません。 「恋は結婚の後で」というフランス貴族の割と有名な話があるかと思えば、例の「お魚くわえたドラねこ」の魚は何だったのか?そして、その魚であることは適切だったのかという話があり、「植民地主義マラリア」というタイトルも内容もごくまっとうなものもあるというような状態です。 読者の側で得るべきところは非常に多いですが、多分ご本人は何かを訴えようとか提示しようとかいう気はないんだろうなぁという感じで、情報量は多いけれど意外なほど気楽に読める知的漫談、知的猥談の趣の強い一冊です^^
えー、決して題名の「乳房」というコトバに釣られて購入したわけではないことを予めお断りしておきたいと思います(笑) まぁ、『 巨乳 vs 小乳』は確かに非常に興味深いお話でしたけどね^^ 乳房についての似たような話は、澁澤龍彦氏も『 エロスの解剖 』か何かで書いてた気がするが、あれは巨乳が主だったかなぁ。澁澤氏の好みは紹介されている絵画からすると小乳のようですが^^; そうそう、これ読んで今さらながら思ったけど、確かに「 巨乳 」に対比させるなら「 小乳 」が正しいですよね。 以前から、「貧乳」や「微乳」という表現はコトバとしてどうかと思っていたのですが、シンプルに「小」でいいわけですよね。うむうむ。 まぁ、いずれにしても、私も小乳が尊ばれる時代に生まれたかったものだが、平民だからいずれにしてもダメなのかしら…(T_T) それに自分も見る分には豊かな乳が好きだしなぁ。あ、いかんいかん、結局また乳の話に(>_<) 知ってる話も知らない話も含めて、どの話題も大変に興味深く面白かったのですが、私が感心したのは、『 フランス人はなぜキスが好きか 』 ( 少しでも許したらもうガマンできないフランス人と最後の一線は守れるアングロ=サクソンの違い )、 『 シェーンは帰らない 』 ( 西洋人の名前は出自を語るという話。ちなみにシェーンはアイルランド系だそうな )、 『 豚は何故軽蔑されるのか 』( 中世ヨーロッパでは高い地位にあった豚が、その後、蔑まれるようになり、ありとあらゆる罵言に使われるようになったのは何故か?この評価の逆転の意外な理由とは… )、 『 インド人もびっくり 』 ( 90年代に日本に長期滞在したインド人の日本体験記の紹介。 食事方法から導き出された 「インドの豊饒は『混ぜること』であり、日本の豊饒は『 並べること 』である 」 というのは至言ですね。)、 『 命より金が大事 』( 江戸時代に唯一交易を認められていたオランダ人の国民性とは? ) などなどでしょうか。 ほんとはまだあるんですが、下手すると収録文の半分以上紹介する感じになっちゃうので、この位にしときます^^; あ、それと先日紹介したグロ系奇想小説集『 壊れた少女を拾ったので 』の著者・遠藤徹氏の学者としての著作 『 プラスチックの文化史―可塑性物質の神話学 』が本書で紹介されていたのにはちょっと驚きました。( 『 フリースの起源 』 ) 学術論文系なので、ちょっとお高い本なのですが、我々の生活や文化に即した感じで書かれているようだし、プラスチックという題材も興味深く、なかなか面白そうな本です。 うーん、もっと色々書きたいけどキリがないので、この辺で(>_<)