『 血の館 』 (2006・独)

ハウス・オブ・ブラッド (2006年・ドイツ)

 監督:オラフ・イッテンバッハ/出演:クリストファー・クリーシャ、ユルゲン・ブロフノウ他

 評価…★★★☆☆

<あらすじ>

細い山道を走る囚人を乗せた護送車と医師ダグの車が衝突し、横転した護送車から逃げ出した囚人たちは脱走のチャンスだと警護の警官に襲い掛かる。武器を手にすると場慣れしており残虐な囚人の方が断然有利だった。激しい闘いの結果、警官側は全滅し5人の囚人が生き残る。そして、彼らは負傷者の世話をさせる医者兼人質として、車中で気絶していたダグに目をつける。

逃げ延びるために国境を越えようと北へと向かう彼らは、やがて霧にまかれて道から外れてしまうが、人里離れたこの地で意外にも民家を見つける。見るからにに古い屋敷で、住人たちは前時代的な生活をしているらしい。

これなら危険はないと見極めた彼らは一気に室内に踏み込む。そこには予想う通り時代がかった生活をしているらしい人々の姿があった。思いのほかの人数で成人男性もいるのにちょっと警戒するが、宗教的な一団らしく長老らしいのが妙なことを口走る以外は特に抵抗もなく言うなりになった。

しかし、その中の一人アリスを助手にケガ人の手術を始めた頃から、何となく様子がおかしくなってくる。別室に隔離した住人たちの一部が急に興奮し始めたのを馴れた様子でベッドに拘束したのを見て、不審を感じた囚人のひとりが屋敷内を探索すると、そこには拘束具や拷問具が大量に用意されていた。これは絶対にまともじゃないと思った時、切り落としたケガ人の腕に喰らいついている住人のひとりを発見する。この屋敷は、そしてここの住人は一体なんなのか?


「ゴアシーンに不足はありません」という意味の店頭ポップを見て借りました^^;

しかし、確かに人体破壊だの何だのは多いけど、いわゆるスプラッタという感じではなかったですね。明るいような暗いような単純なような複雑なような変な感じなんですよね。ドイツ映画だからかしら?(←ドイツ映画に偏見がある人)

ちなみに、パッケージは実際の作品とちょっとイメージ違う感じです。

※以下ネタバレ有り※

交通事故のきっかけになる出来事(山で鳥がおちてきてそれが…という、風が吹けば桶屋が儲かる的なモノ)がちょっとどうなんだろうという気はしますが、囚人が逃亡を企て実行する辺りは結構緊迫感があって良いです。普通のアクション物みたい。まぁ、それにしてはちょっと不自然なくらいに残虐シーンがありますけど^^; あ、あとボス格の囚人が余りにもダメ人間で行動が不自然なのが気になりますが。

そして、彼らが道に迷ってたどり着いた森の中の古い一軒家に住む謎の人々。これがどうやら食人鬼らしいんですが、宗教的戒律でもって自らを律しているらしいのですね。人が喰いたくなったら、お互いで拘束したりして耐える。そして、なるべく欲望が起こらないように人里離れて暮らしている。この着想は新しい!見てて思わず手を打ちましたよ。まぁ、よく考えればモンスター物としては結構古典的な設定なんですが、ゾンビ物としては新しいなと^^;(実際はゾンビ物ではないようなのですが、私がレンタルしたところではそう分類されていたのです)

しかも、彼らの弱点はやはり頭で、動きも頭も一般的なゾンビ同様鈍いと思わせておいて、突然凄い身体能力を見せてくれたり、潰された頭が再生したりとか何か妙で面白いんですよ。最初、食人鬼の方々がえらくあっさり殺されるのでつまんないと思ったのですが、再生するなら仕方ないですねぇ^^;

で、囚人達が惨殺され貪り食われる中、アリスとダグは過去に何かがあったらしくて、彼だけはアリスが逃がしてくれるんですね(挿入される映像からすると、幼少時のダグが既に成人しているアリスと出会って何らかの心の交流があったらしい)。そして、必死で逃げ延びたダグは山中で捜索隊に出会う。

良かった助かったーと思ったら、次のシーンでいきなりダグは犯罪者扱いです。供述の辻褄が合わない上に同行してたはずの囚人はいないし、ダグの靴に誰のものともわからない血痕がついているって言ったら、確かに怪しいけど、あんないきなり犯人扱いするもんかね?状況証拠だけだし、それもかなり弱いものだよね。それにダグは結構社会的地位高そうなのに。そして、弁護士を呼んでくれというダグを取調室からいきなり拘置所に護送ですよ。ドイツには人権はないのか?まぁ、今にして思えばこの強引な展開が作品の転調の序章だったのかもしれませんが、ドイツ司法について知識がないので何ともいえません。

そんなこんなあって、ダグを乗せた護送車が例の事故があった山道に差し掛かる辺りで厭な予感がしてきますが、これが的中。前回と全く同じ事態が発生します。ダグが人質になるとこまで一緒。ただ、今回の囚人は前回よりちょっと個性的で面白い。ボス格がデブでハゲのおっさんのくせに変な芸術家系インテリ風。しかもキレキャラ。こいつはかなりムカつくヤツです。

そして、一同は例の山小屋と至るのですが、この時に唐突にギャグが挿入されるのにちょっとびっくりです。面白かったですが。(ちなみに、山小屋に押し入ってアリスをレイプするシーンが展開されるのだが、現実のシーンのように見せかけたそれが囚人のひとりの妄想で、それを聞いたダグが「いや、実際はこんな感じだ」と言って、ゾンビに襲われるシーンが展開されるというもの^^;) この辺からどんどん不思議な感じになってきて、結局ダグとアリスの因縁も全く説明されないし、食人鬼一同についての説明も全くないし、前半の「これは拾い物だ」という嬉しい驚きが一気に失望へと変わっていきます。と言いつつ、ドタバタっぽいところはちょっと面白いけど^^; しかし、麻酔もアルコールもなしでの局部手術に耐えた囚人が術後にあっさり殺されちゃう(それも仲間に)のはかわいそうでした。

で、何なんだこの映画は…と思っていると何と3回目の繰り返しが発生します。ここで、またちょっと見方が変わりましたね。そうか、後半の変貌は確信犯(誤用)なのかと。単に考えなく作って破綻してるんじゃなく、敢えて破綻させているのだなあと。そう思えばこれもありかなぁという感じなんですねぇ。最後はダグとアリスが時間差ではあるけど共に死んで、ある意味めでたしめでたしだし(アリスは多分、暴力的に肉体を破壊されない限りは不老不死なので)。

このムチャクチャな作りは受け入れられない人も多いかもしれないけど、私としては部分的にはかなり見所もあるし意外に悪くないと思います。私は余りピンとこなかったですがゴアシーンも確かに多いので、それ系目当てに見てもまぁ及第点じゃないかな?

あ、ホラーにお約束のサービスシーンは全く無し(きれいどころすら出てこない。唯一出てくる妙齢(に見える)の女性アリスは全然魅力ないし)ですが、この映画の場合は設定上それが自然なので問題ありません^^;

(10月鑑賞分)