『定年影奉行仕置控―幕末大江戸けもの道』 葉治 英哉

定年影奉行仕置控―幕末大江戸けもの道  葉治 英哉 (幻冬舎文庫) ¥680  評価…★★☆☆☆ <作品紹介> 時は幕末―。江戸南町奉行所のもと吟味方与力・小山半兵衛は、老いを重ねて出番を失った楽隠居の同志を結集。「影奉行」と称して、迷宮入り殺人事件の解明に乗り出す。江戸の市井に生きる庶民の哀歌を織り交ぜながら、やがて暴かれる黒幕の実態。老いを巧みな知恵として、余命を捧げ、世の不条理と戦う同志たちの、新たな生き甲斐探しの物語。  (文庫裏紹介文)
うーん、私は何故この本を買ってしまったのだろう…。「影奉行」とか「大江戸けもの道」とかキャッチーな言葉がついていても、タイトルに「定年」ってある時点で気付けよ。 …と、冒頭から自己批判していることからおわかりかと思いますが、これはちょっとひどかったです(T_T) 初老以上の男性にはもしかしたら面白いのかもしれませんが。 以下、かなり暴言入りますm(_ _)m 最近、時代小説で愛読している作家さんの新刊がハズレ続きだったこともあり、ここは思い切って下らない時代小説でも読んでみるかと思って、怪しげなタイトルを見て敢えて買ったのが本書なのですが、これが予想をはるかに上回るひどさでした。 まず、序章のタイトルが 『生き甲斐さがし』 でしょ。宗教雑誌や高齢者向け健康雑誌じゃないんだからさぁ…。そもそも江戸時代の人が生き甲斐とか考えるか? しかし、まぁ、ここは譲ってもいいですよ。老人の頑張りというのがテーマみたいですからね。が、しかし、冒頭の主人公と義弟の会話のテンポの悪さと内容の無さは何事?確かに現実の会話はそうかもしれないけど、誰もそんなもん読みたくねーよ。 (しかし、この感じはこの後もずっと続きます…)  しかも、唐突に 「一穴主義」 って何よ…(-"-;)   よくもまぁ、そんな語を自分の作中に出すよな。全く目を疑ったよ。時代的に云々以前の問題だよ。で、そうじゃないって否定する主人公について、かつては馴染みの女もいたのだというのはいいけど、 「風俗取り締まりが主たる仕事だったので、手心を加えた縁で理無い仲になった者もいた」 って、おい!それは相手の弱みにつけこんだセクハラだろう! そういうの馴染みの女って言わねぇよ(-"-;) もう、この辺で (って、まだ巻頭数ページ目なんですが…) 、じいさん正気か?呆けてんじゃねぇのか?と著者略歴を見直しましたよ。で、「1928年生まれ」か。リアルに呆けてるかも…と思って、ちょっと冷静になりました。まぁ、そのくらいのお歳だと病的なものでなくても感覚的にかけ離れたものがあったりするからねぇと思って。 で、そういう点にガマンしつつ読んだら、まぁ、何とか読めないことはなかったよ。一応、ひとつの事件の真相を究明して犯人を裁くという柱の話があるからね(でも、かなりお粗末な話だけどね…)。その他の付随してくる話も部分的に面白いところもなくはない。というか、途中からこの何とも珍妙な話が逆に面白くなってくるんですな。こういう風に考える人もいるのねぇとか、この年齢の人が書くとこうなのかしらねぇとか、何を思ってこんなもん書いちまったのかねぇとか、そもそも出版社はどういうつもりだったんだ(ちなみに文庫書き下ろし)とか色々考えさせられます(笑) しかし、様々なことを考慮しても63のじいさんに23のとびきりの別嬪さんがベタ惚れって設定はちょっとなぁ…。江戸時代の63歳って現代の感覚でいうと考えられないくらい年寄りなんだよぉ?(-"-;) しかも、15歳の時に出会った時からこの人ならって思ってて、17歳の時に将来は妾にしてもらう約束をしてからはずっと結ばれる日を待ってたって…、オヤジのファンタジーにも程があるだろう(-"-;) で、63歳と23歳は機会を得て首尾よく結ばれるんですが……、まぁ、これ以上突っ込むのはやめよう。話が下世話になり過ぎる(-"-;) しかし、事後に別嬪さんが「もったいないけど残り香を落とさなきゃ」とか言うのが私には気持ち悪くて仕方なかったですね。残り香って、それ加齢臭だろう…。いや、まぁ、何を薫香と感じるかは好みの問題ですから加齢臭でも本人が好ましいと感じるんならばいいんでしょうけどね。しかし、どんなに好意的に考えても、中年の私でも63歳って言ったらちょっとひくぞ。リアリティ無さ過ぎないか? まぁ、そんな感じで本書はトンデモ本の一種として読めばそれなりに楽しめますが、時代小説だと思って読むと発狂しそうな出来です。どういう層をターゲットにしているのか全くわからないですね。年寄りは幻冬舎文庫買わないような気がするけど、これは偏見?