『 SURVIVE STYLE 5+ 』(2004・日)

SURVIVE STYLE 5+  (2004年・日本)

 監督:関口現

 出演:浅野忠信橋本麗香小泉今日子岸部一徳荒川良々ヴィニー・ジョーンズ

 評価…★★★★☆

<あらすじ>

殺しても殺しても何故か蘇ってくる上に何故かパワーアップまでしている妻と闘い続ける男、CMプランナーの女と人気催眠術師のカップル、優しくて話のわかる父、美しく優しい母、聡明でかわいい娘と息子という絵に描いたような幸せな一家、空き巣で生計を立てている若者3人組、アメリカ人の殺し屋とその通訳……ごく普通の人から極めて変わった人まで含めた5組の人々。普通なら何の関係もないような彼らのそれぞれの人生におけるそれぞれの事件が、時には深く時には微妙に絡み合いながら物語は展開していく。


ストーリーがあってないような映画なので、あらすじが凄い微妙な感じなのはご容赦下さいm(_ _)m

※以下ネタバレ有り※

パッケージや何かからオシャレでとんがった映画を作ろうとしてる臭が強く感じられたので、余り期待はしてなかったのですが、まぁ、これだけ豪華メンバー(小泉今日子は微妙だが)が揃ってるんだから見られないことはないだろうと思って借りました。

で、始まりはシリアスめな死体埋めシーンだったのですが、屋内に入るなり有り得ない色調とデザイン。インテリアも変だし服装もよく見るとかなり変。うわ、これはないわ…と思いつつ見ていたのですが、これが意外にも面白い!

まず、殺されても殺されても蘇ってくる妻と浅野忠信の闘いがいい。この奥さんは『ソマリア・サッチ・ア・スゥィートハート』の杣理亜みたいに殺されても時空を超えた感じで蘇ってくるんですね。しかも、こちらはどんどんパワーアップしていくんです。殺された後に燃やされた時に蘇ってから火吐くようになってたのはまだしも、何故か腕がロボットパンチができるようになっているという度を越したバージョンアップぶりには笑ってしまいました^^;

彼らの闘いはまだ続くのですが、それはまた後で。

続く小泉今日子阿部寛カップルにはちょっとげんなりします。まず画面がひどい。ポップやキッチュにも程があるだろう!って内装の部屋。そして、寛ちゃんは好きなんだけど物凄い嫌な男の役だし、小泉今日子はこの映画では妙に老化した肌が目立ってアップは見るに耐えないし、演技もねぇ…。役自体もイタい感じの女なんだけど実際イタい感じでした。あ、でも、肌以外はキレイでしたよ。普段の彼女には見られない派手目のキャリアウーマン風のファッションがよく似合ってて素敵でした。しかし、このふたりの話はちゃんとはオチてないんだよな。まぁ、どうでもいいけど。あ、阿部寛の殺害シーンがムダにリアル、でもないけど結構な流血沙汰で状況設定も派手なところはよかったです^^;

で、えーと、津田寛治と愉快な仲間たちか。これは凄く意外なことに津田くんはいなくてもいいような役で他のふたりがメインなんですね(津田くんにも一応の性格付けはされてるけど私は余りピンときませんでした)。 一番変なコがゲイで、仲間のイケメン風なコのことを慕ってて、津田くんは気付いてないけど本人は薄々感づいてるという設定なんですが、すごくあからさまに描かれてるし、この色々ダメなコがゲイってところからしても、何かゲイを笑い者にしてる感じで嫌だなーとちょっと不快に思って見てたんですが、最後で何と物凄く劇的な感じで想いが実るのに感心!

ダメなコがバカやって外人の殺し屋に殺されそうになるんですね。そこで、その殺し屋がアメリカ人らしく(と決め付けてるけどイギリス人かもしれない…)罵り言葉として「このホモ野郎!」みたいなことを言うの。すると、今まで遠巻きに見てたイケメンくんが、だっと走り寄ってきて彼をかばって刺されるのです。で、アメ公が「何だ、友達もホモか」とかほざいたら、イケメンくんが 「違うよ!」 と怒鳴って、喜びや驚きや恐れといった様々な感情が綯い交ぜになっているダメなコの方を振り向いて、 「ゲイだよ」 と言って、目で笑って見つめ合うんです! まぁ、あくまでもコミカルに撮られてはいるんですが予想外の展開だったのでぐっときちゃいました^^; 私までイケメンくんがかっこよく見えてきちゃったもの(笑) しかし、ほんとに津田くんは何のためにいるのだ?

そして、小林さん一家。何か裏があるんじゃないかと思うくらい明るく美しく愛情に溢れた素敵なご家族です。お父さんはちょっとぬーぼーとしているけど優しくて話がわかるし、お母さんはおっとりと美しく優しい。娘は貫地谷しほりだからかわいいし、息子なんか神木隆之介くんだからむちゃくちゃかわいいし。家族仲良く人気催眠術師のショーを見に行く途上の自家用車の中でも、カーステレオから流れる音楽に合わせて4人でノリノリだし。麻生祐未のあんな顔はなかなか見られないですよ。あ、神木くんも。

結局、この小林家の場合は家族内には本当に何の問題もなかったのですが、外の世界に恐るべき罠があったのですね。ショーでステージに上げられ、鳥になる催眠術をかけられたお父さんの術が解けなくなってしまうのです。 で、それを巡って、のんびりした家族ながらも何だかんだと葛藤があったりはするんだけど、最後は神木くんが 「ボクはお父さんが鳥でもいいよ」 か何か言って感動のラストとなるのでした。言ってることは実際ちょっとよくわからないし、何の解決にもなってないのだが、神木くんの健気な演技の余りのかわいさに負けていい話になってしまっているところが凄い。

しかし、お父さんは終始「ぽっぽっ」と鳴き続けてるがあれは何の鳥のつもりなんだろう? 「ぽっぽっ」って言うとイメージは鳩だけど、鳩はほんとはあんな風に鳴かないし、あの動きは鶏っぽいよね。そういや、クリスマスのトリの丸焼き見て、オーブンレンジで焼かれる自分を想像してたりしたけど。まぁ、催眠術はかけられる人の技量の範囲のことしかできないというからなぁ(知らないものにはなれないし、できないことはできないらしいっすよ)。でも、最後には空飛べてたけど(笑)

What's your function here?(あなたの役割は何ですか?) 」を連発する仕事はできるがキレやすい殺し屋と荒川良々の通訳(本来は殺人コーディネーターらしい)のコンビも面白いのですが、彼ら自身には特にドラマがないのが残念。

そして、話はまた浅野くんと不死身妻に戻ります。浅野くんは自分で妻を殺すのを諦め、上述の殺し屋に妻殺しを依頼するのですが、やっぱり蘇ってきちゃうんですね。 そんなある日、途方に暮れる浅野くんが帰宅すると家中に飾り付けがされている。ロウソクだのトナカイだのツリーだの。そう、その日はクリスマスイブだったのです。呆然としつつも微妙に嬉しそうな浅野くんを天井から下がった巨大サンタブーツが襲う!展開からして、どう考えてもこれには奥さん入ってるよなと思ったら案の定なんだけど、いつもとちょっと違うのは、着地と脱出に失敗して間抜けな感じでの登場なんです。そして、エスカレートした変化の結果なのかドレスアップしたのか、頭は鳥かごをかぶったアップスタイルに隈取り風メイクで、珍妙な紅白のドレスといういでたち。そんなわけで、これを見た浅野くんがつい「 何か凄い格好してんな 」って笑っちゃうんですね。そしたら、彼女も照れながら笑っちゃうんです。映画開始後初めての笑顔で、そのかわいさに不覚にもキュンときました^^; そして、何故か唐突にラブラブになるふたり。そもそも何故殺すような事態になったのかわかんないんですが。全てのことに理由などないのかも知れませぬ。

あんなに闘いを繰り広げておいてこんな終わり方?と思ったけど、どうやらこの映画は結構愛あふれる話みたい(小林一家然り、ゲイの若者達然り)だから、まぁいいかと思ってたら、意外にもここからまた急展開。例の殺し屋が粗品を持って帰国の挨拶にきて彼女が生きているのを見てしまうんです。で、プロフェッショナルとしては当然のことながら「申し訳ありません、すぐやり直します!」ってなって、仲直り(というのか?)してた浅野くんは焦って止めるんだけど彼らは止まらない。そして、今回の殺しは何故かうまくいってしまい、奥さんは生き返ってこないんですね。嘆き悲しむ浅野くん。お前自身が何度も、しかも結構ひどく殺したくせにって気がしますが。

そして、ある日、浅野くんは殺し屋コーディネーターのオフィスを訪れる。そして、壁に飾られていた彼女の臨終写真(請け負った仕事の結果写真を飾るのがコーディネーター氏の趣味らしい)を剥ぎ取り燃やした上で、高層階にあるその窓から飛び降りる浅野くん。この飛び降りシーンはなかなかいいです。窓から降りる時も落ちてる時も。私も飛び降り自殺をする時はああいう迷いのない飛び方をしたいものだと思いました。多分する機会はないと思いますが。

で、あらら~、やっちゃったよ。でも、これはこれでアリかなぁと思ってると、地上に激突する前に浅野くんを受け止めるものが。そう、賢明な皆さんはもうおわかりですね? それは鳥になった小林さんのお父さんなのでした(笑)

そして、お父さんとその背にのった浅野くんは空中飛行を楽しむ。その様子を映しながら他の人々のその後の様子を映して……終劇。うーん、微妙。でも、別にストーリーがあるような映画でもないし、ここに至るまでが面白かったのでいいか…という感じでした。

本筋には全然関係ないんですが、私は作中にちょっと挿入されるファミレスにいるいまどきの女子高生ふたりのシーンが好きです^^ ひとりが何か結構色んな問題に遭遇(カラスに襲われたり男に襲われたり…)してて、もう一人もそれにちょっと驚いたり心配したりはしてるんだけど、どちらも何か覇気がなく、会話も成立してないわけではないけど盛り上がらず、でも一緒にいる…ってのが妙に面白い。ふたりとも結構かわいいし。

(10月鑑賞分)