『ファンハウス』 ディーン・R. クーンツ


funhouse.gifファンハウス ディーン・R. クーンツ/風間 賢二 訳  (扶桑社ミステリー文庫) ¥550  評価…★★☆☆☆ <あらすじ> その夜、20歳のエレンはある決意を胸に秘めてしきりと酒を流し込んでいた。彼女はそんなに酒は飲めないのだが、計画を実行するためにはどうしてもアルコールの助けが必要だったのだ。その計画とは生後まもない我が子を殺すことだった。その赤ん坊は彼女が産んだことには間違いがないが、とても自分の血を引いているとは思えず、見る度に悪寒が走る存在でしかなかった。その子は恐ろしい奇形だったのだ。種が異なる生き物としか思えないほどの異形に加え、その行動や成長速度も尋常ではない。そして、言葉もしゃべれない赤ん坊であるはずのその生き物の目に浮かぶものは悪意や憎悪といった負の感情にしか見えなかった。結婚後すぐに暴力を振るうようになった夫への愛情はとうに無くなっているエレンには、これ以上ここでの生活を続けることもこの邪悪な存在を育てることも耐えられなかった。 そして、凶暴な赤ん坊から激しい抵抗を受けながらもエレンが何とか目的を達した時、夫であるコンラッドが部屋に入ってきた。彼は美形の自分にも妻にも全く似ていない恐ろしい異形の息子を何故か溺愛していた。殺されることを覚悟したエレンだったが、意外にもコンラッドは彼女を散々痛めつけ家から追い出すにとどめた。戸惑う彼女に彼からの呪いの言葉が浴びせられた。「お前に新しく生まれた子供を必ず探し出して殺してやる」。 そう、彼は彼女に同じ思いを味わわせるために、復讐のために彼女を逃がしたのだ。 やがて、エレンはその言葉を忘れ新しい生活へと入っていくが、コンラッドはその復讐を生きる目的としてその後の人生を過ごしていた。そして、事件から25年後、とうとうコンラッドの率いるカーニバルの一隊がエレンとその家族の住む街へとやってきた。エレンの子供達、娘エイミーは16歳、息子のジョーイは10歳だ。ふたりはそれぞれの思惑でカーニバルへと足を踏み入れる。そこにコンラッドの魔の手が迫る。 トビー・フーパー監督の映画「ファンハウス 惨劇の館」のノベライゼーション。    発表時の名義はオーウェン・ウエスト。画像は映画のものです。
私はクーンツってあんまり好きではないんですが、何故かB級ホラー小説が読みたくなってふと衝動買い。確かこれ映画になってたし…と思って。実際は逆(ノベライゼーション)だったわけですが。でも、解説によると映画からはかけ離れた物語が創作されて付加されいて、独立した別の作品と言っても良いものなんだそうです。ちなみに私は映画も見てません。 ※以下ネタバレ有り※ さて、前置きはこのくらいにして感想。うーん、やっぱり私はクーンツってダメかも…。映画だと異形が出てくるしカーニバルという舞台設定も見て面白いだろうし、何も考えずにそれなりに面白く見られる気はするけど、小説だとつい説明を求めちゃうからなぁ。コンラッドの性格が歪んでる理由(12歳の時に彼の過失で起こった火災により家族の殆どを失い、唯一生き残った父から激しい虐待を受けたためなんだそうだが、妻と5人の子を失い自らも激しい肉体の損傷を受け家屋敷も失ったわけだから、お父さんの行動も無理もないと思うけどね…。しかも、火をつけたコンラッドだけ無傷なんだし。)は明示されているけど、ここは逆にいらないよね。そんなに説得力ないし。それより、何故コンラッドにはハンパじゃない奇形(成長が早くて巨大で凶暴で怪力で手足に鉤爪があるっていうのは既に別の種族だよねぇ?)の子供しか生まれないのかが気になるわ。 そして、かなり熱心に書き込まれている、エレンとエイミーの2代続いた行き過ぎたピューリタン的教育による歪みたいなのが無神論に近い仏教徒にはどうもピンとこないんですね。これって必要なの?って思っちゃう。欧米の小説には結構こういうのあるけど。ああ、でも、この作品が書かれた時代的には必要なのかもしれないなぁ。 エイミー関連の何やかやはある種の青春小説として書いているのかと思えば頷ける。(そう、多分この作品はホラー青春小説なんですよ…) 年寄りの読者としては、男友達との性的な何やかとかドラッグ遊びの様子とかこんなにいらないよって感じなんですけどね。正直かなりうんざりしました(-"-;) しかし、エイミーの友達のリズの物凄い人間性にはちょっと感心しました。「わたしは美人でスタイルが良くてセクシーで男が好きだから、将来はラスヴェガスに行って高級娼婦になるの」って、ここまで過激な友人が設定として必要なのかどうかちょっと疑問ですが。この辺も宗教的な何やかやなのかしら…。 振り返ってみると、これに出てくる女性は元凶のエレンから脇役(ガンサーに最初に殺されるおねえちゃんとか)に至るまで、みんなとびきりの美人でスタイルもいいけど人間的にどこか歪んでる人なんだなぁ。これにも何か意味があるのかしら。それともクーンツ作品の特色? ちなみに男はほとんどがクソ野郎ですね。エイミーの最初の彼氏なんか個人的には殺しても飽き足らないくらいの見事な屑です。